苦手な同僚が同担だった件について。


 え、え……?

 びっくりして顔を上げると、竜矢くんは真顔だった。
 とてもふざけているようには見えない。


「今の流れだと自分のことだって思わない?」
「思わない……」
「えー!」
「お、思うわけないよ……!」


 だって、竜矢くんが私のこと好きになるはずないじゃない。
 竜矢くんに似合うのは戸川さんみたいなかわいらしい女性か、天王寺さんみたいな綺麗でカッコいい女性だと思っていた。


「だって、なんで……?」
「なんでって、かけるかわいいし。好きなもののことになると全力なところとか、丁寧で真面目なところとか、笑ったところとか……」
「ちょ、もう無理!」


 これ以上は耳がおかしくなってしまいそうだし、心臓が破裂する。


「ほら、今もかわいい」
「や、やめて……」


 本当にもう、これ以上はいっぱいいっぱいだ。


「……ねぇ、やっぱりバーはやめてウチに来ない?」
「っ!」


 そんな風に甘さを孕んだ視線で見つめられたら――、断れるわけがない。


「……ん」


 こくりと頷くと、彼は顔を綻ばせて優しく微笑む。
 その笑顔に胸がきゅうっと締め付けられる。


「行こっか」


 ごく自然に手を繋がれ、するりと指を絡ませられる。
 いい大人なのに手を繋ぐだけでドキドキしてしまう。

 夢の中にいるような、どこか現実味のないふわふわした気持ちのまま、私たちは夜の帷に消えた。


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