苦手な同僚が同担だった件について。


「今朝は寝坊してしまって。たまには外で食べようと思います」
「そう、楽しんでね」


 天王寺さんはにこやかに送り出してくれたので、ぺこりと会釈して足速に会社を出た。
 まさか二駅先のお店にまで行くとは思わないだろう。
 お昼休憩中に帰って来れたら問題ないとは思うが、初めてのことなのでドキドキしてしまう。

 誰にも見られないように、と祈りながらいつも以上に気配を消した。
 電車の中で「今出ました」とメッセージを送る。すぐに返信があった。


【先に入ってるね。ゆっくり来て】
【すみません、急ぎます】
【ゆっくりでいいのに(笑)】


 こんな風にメッセージのやり取りをするのも、数日前は考えられなかった。
 やっぱりまだ変な感じだな……。


「お待たせしました」
「お疲れ様ですー」


 飛鳥さんはヒラヒラと手を振る。


「ほら見て、すごくうまそうだよ」
「ほんとですね」
「何頼む?」
「桂馬が食べていたチキンカレーで」
「ふふっ、だよね。俺もチキンカレー」


 流石というか、やっぱりというべきか。
 推しと同じものが食べたいというのはファンの心理だ。

 運ばれてきたチキンカレーは、正に桂馬が食べていたカレーそのものだった。
 本当はアクスタと一緒に撮りたかったけど、流石に会社には持っていけないから仕方ない。


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