苦手な同僚が同担だった件について。


 これ以上続けられても反応に困るので、私は半ば無理矢理話題を変えた。


「そう言えば、もうすぐ香の舞台が始まりますよね」
「そうだね! 行きたかったぁ。チケット取れなかったんだよね」
「飛鳥さんは香も好きですか?」
「もちろんだよ。エルナイ箱推しで桂馬に寄ってるだけ」
「ふふっ、私もです」


 寄ってるという言い方が面白くてつい笑ってしまった。


「……やっぱり、角田さんの笑顔いいね」
「え?」
「もっと笑えばいいのに」
「……!」


 さっきのはセールストークが上手いな、で流せたけれど今のはダメだ。
 かあっと頬が熱くなるのを感じる。

 ほのかな熱を振り払いたくて、強引に話を戻した。


「そんなことよりっ、実は舞台のチケットが余ってるんです」
「えっ!? そうなの!?」
「私の友人が香推しなんですけど、結婚が決まって今準備に忙しくて、どうしても式の打ち合わせの日と被って行けなくなってしまったらしくて」
「えー! 推しの舞台なのに」
「彼女は既に五公演分のチケットを持っているから一回分は諦めると言ってました」
「五公演ってすごいな!」


 静奈は舞台が決まった時からこれに全てを懸ける、と意気込んでいたので各抽選はすべて応募し、先着にも参加して見事に勝ち取っていた。
 私も協力して一公演分貢献することができた。


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