苦手な同僚が同担だった件について。


 幼い子どものように声をあげて泣きじゃくった。
 涙が枯れ果てるまで泣いて、目は腫れぼったくなって酷い顔だったけど、心はスッキリしていた。

 そして、無性に桂馬に会いたくなった。
 将信さんと付き合い出してから現場に行く回数が減っていたけど、今ものすごく桂馬に会いたい。

 久々にライブ映像を観て、また泣いた。
 誰よりも輝く桂馬を見て、眩しくて涙が止まらなかった。
 何に感動しているのか、自分でもよくわからない。
 上手く言語化できなかったけれど、ただ成瀬桂馬というアイドルが大好きなんだと再認識した。


「桂馬……っ」


 それから私は心に決めた。もう私には桂馬がいれば良い。
 恋愛なんてしない、私には必要ない。

 その後転職活動をし、チェスター株式会社という中堅の広告代理店の中途採用に応募した。
 面接を受けたら合格した。


「前職は営業だったそうだけど、うちでも営業希望?」
「いえ、できれば事務をやらせていただきたいです」


 今の会社ではなるべく人と関わり合いたくない。
 業務に必要な最低限だけ、プライベートなんて誰にも知られたくない。

 ロボットのようだと後ろ指さされても、不倫して営業成績を上げていたと思われることより遥かにマシだった。
 そうして私は人との間に壁を張ることで、自分自身を守ろうとしていたんだ。

 それなのに、竜矢くんは私の壁を乗り越えてきた。
 あんなに苦手に思っていたのに、こんなにも気の合う友人になれるなんて思ってもみなかった。

 だけど、これ以上はダメ。その先は越えたくない。
 もう誰かに恋して傷つきたくない。

 竜矢くんを失うかもしれないと思うと、怖かった――。


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