苦手な同僚が同担だった件について。


 角田さんとエルナイの話をしていると尽きなくて、時間を忘れる程あっという間で楽しい。
 好きなもののことでこんなに語り合えて共感し合えるのが、こんなにも楽しかったなんて初めて知った。

 思えばここまでのめり込む趣味も今までなかった。
 推しは偉大とはよく言ったものだが、本当にその通りだなと常々思う。

 会社ではただの同僚としての距離感を保ちつつ、休日は推し活に勤しんだ。


「角田さんって仕事できるけどロボットみたいで怖いよね」


 ロボットなんてとんでもない。
 素顔の彼女は推しの一挙一動に歓喜する感情豊かでかわいらしい女性だ。

 その素顔を知っているのは自分だけなのかと思うと、ちょっとした優越感に浸ってしまう。
 誰かに知って欲しいような気もするけど、俺だけが知っていたいという思いもある。

 だが、原宿でエルナイのロケ地巡りをしていた時、ある男が現れる。


「かけるちゃん、会いたかった」


 下の名前で親しげに呼ぶその男のことが、初見で気に食わなかった。
 そいつの顔を見た途端、角田さんは今まで見たことのない程動揺していた。


「かけるちゃん、頼む。話を聞いてくれないか」
「話すことなんてありませんっ!」
「かけるちゃん」
「帰ってください!」
「かけるちゃん、僕は……」


 しつこい、嫌がっているのがわからないのか。

< 78 / 140 >

この作品をシェア

pagetop