『可愛い君へ』

その4


いつものように吉川が花苗の席にやってきた。

なんだか浮かない顔をしている。

「吉川。どうしたの?元気ないじゃない。」

「・・・谷口。俺、失恋したかも。」

「え?なんで?」

ブログではデートしたりして仲良さげだったじゃない。

「だって響子先輩、朝霞部長と焼き肉デートしたって・・・」

「え・・・?」

「男と女が焼き肉を一緒に食べるってことは、つまり・・・そういうことだろ?」

「そういうことって?」

「肉体関係があるってこと。」

え?そうなの・・・?

朝霞部長と響子先輩ってそういう関係なの?

あまりのショックの大きさに花苗は自分でも驚いてしまった。

そうか・・・私、思っていた以上にもう朝霞部長を好きになっていたんだ・・・

恋をしていたんだ・・・

花苗は朝霞の姿を見ることが辛くて、仕事で書類を渡すときにもすれ違うときにも目を合わせないように俯き、涙を堪えた。

朝霞に話しかけられそうになったときも、身体をかわして逃げた。

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