隙なしハイスペ女子大生は恋愛偏差値が低すぎる。

プロローグ

 分厚い文庫本のページをめくる細くて白い指。


 忙しなく字を追う真っ直ぐな瞳に、淡い翳りを落とす長いまつ毛。


 視線に気づいて一瞬だけ目を合わせ、控えめに笑みを浮かべる口元。


 静かに抱き寄せると、緊張に小さく震える細い肩。


 抱きしめた手にふわりと温かい感触を与える、手入れの行き届いた長い髪。


 耳元で「大野くん」と小さく呼ぶ、悩ましいほど艶っぽい声。


 ───斉木(さいき)里香(りか)を形作るその一つ一つに、俺はいつしか取り憑かれるように夢中になり、求めることを止められなくなった。
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