隙なしハイスペ女子大生は恋愛偏差値が低すぎる。
別になんてことはない挨拶程度の一言のつもりだった。「戦争と平和」を読んだことはないが、作者の名前くらいは知っている。きっと斉木さんは「うん」とか「あんまり」とか「好きでも嫌いでもない」とか適当な返事を返すだろう。それで、俺は「そうなんだ」と返す。終了。
だが、斉木さんは尚も口を開かなかった。
代わりに、俯き気味だった顔を瞬時に上げ、その大きな目を見開いてじっと俺を見た。その綺麗な瞳に俺はたじろぎ、胸がどくんと音をあげ、ごくりと生唾を飲んだ。
しかし、中身を見たことをもしかして怒っているのではないかと即座にまた別の焦りが出てきた。
「ごめん、中身ちょっと気になっちゃってつい見ちゃった。これトルストイだよね?俺、『人はなんで生きるか』って短編集しか読んだことないんだけど」
少し背中に汗をかき始めているのがわかる。余計なことを言ってしまったかも、お前の話なんて聞いてないって思われたかも、とネガティブな方向へとぐるぐる進み始める思考回路。斉木さんは変わらず俺をじっと見ているが、今度は逆に後ろめたい思いを隠すかのように俺が視線を外す。
斉木さんはここでようやく口を開いた。
「大野くん、本読むの?」
だが、斉木さんは尚も口を開かなかった。
代わりに、俯き気味だった顔を瞬時に上げ、その大きな目を見開いてじっと俺を見た。その綺麗な瞳に俺はたじろぎ、胸がどくんと音をあげ、ごくりと生唾を飲んだ。
しかし、中身を見たことをもしかして怒っているのではないかと即座にまた別の焦りが出てきた。
「ごめん、中身ちょっと気になっちゃってつい見ちゃった。これトルストイだよね?俺、『人はなんで生きるか』って短編集しか読んだことないんだけど」
少し背中に汗をかき始めているのがわかる。余計なことを言ってしまったかも、お前の話なんて聞いてないって思われたかも、とネガティブな方向へとぐるぐる進み始める思考回路。斉木さんは変わらず俺をじっと見ているが、今度は逆に後ろめたい思いを隠すかのように俺が視線を外す。
斉木さんはここでようやく口を開いた。
「大野くん、本読むの?」