隙なしハイスペ女子大生は恋愛偏差値が低すぎる。
なのに斉木さんは、俺の声が全く届いていないかのように、何の反応もないままじっと動かない。彫刻のように固まって、でも何かの言葉を見つけようと逡巡しているのは、泳ぐ目から想像できた。正直、さっきまで女子集団の中心に身を置きにこにこしていた女の子と同一人物とは思えない。急に体調でも悪くなったのだろうか。
とりあえず本を返そうと斉木さんの方へ近付く。
近付きながら、俺は考えた。気まずい。なんだかよく分からないけど斉木さんは雰囲気が良くない。斉木さんの本だったかと問うてるのにその返答すらない。きっと何か俺が良くないことをしてしまったのだろう。自分の私物に勝手に触られたのが不快だったのだろう。とにかくさっさとこれを返して昼飯を食べに行こう。
俺は斉木さんの前に立ち、本を差し出した。斉木さんは、それを静かに受け取ろうと手を伸ばしかける。
「…トルストイ好きなの?」
とりあえず本を返そうと斉木さんの方へ近付く。
近付きながら、俺は考えた。気まずい。なんだかよく分からないけど斉木さんは雰囲気が良くない。斉木さんの本だったかと問うてるのにその返答すらない。きっと何か俺が良くないことをしてしまったのだろう。自分の私物に勝手に触られたのが不快だったのだろう。とにかくさっさとこれを返して昼飯を食べに行こう。
俺は斉木さんの前に立ち、本を差し出した。斉木さんは、それを静かに受け取ろうと手を伸ばしかける。
「…トルストイ好きなの?」