隙なしハイスペ女子大生は恋愛偏差値が低すぎる。
少女
俺のことを「雄」として見てしまうという斉木さんの話が終わると、もともと静かだった空き教室はより一層静寂に包まれた。
話が長くなるから座ろうと提案してきた斉木さんは、俺から机2列分隔てた席に着いている。二人の距離はとても遠い。話をしている間、斉木さんはずっと下を向いたままだった。
「…笑っちゃう話でしょ。そんな思春期の出来事引きずって拗らせて、どんどん、その、男の人が苦手になって。高校も本当に…悲惨だったの」
誰にでも優しくいつも明るい美人、斉木さん。言われてみるといつも一緒にいるのは女の子だけだ。明るく笑いかけているのは常に女の子に対してだ。
「それで、消えちゃうの?」
なんとなくその後の斉木さんの思考は想像できた。
「うん…。私が自意識過剰なだけだ、男の人は別に私のことなんて気にしてないって自分に言い聞かせてるんだけど…男の人が輪の中に入ってくると身構えちゃって」
「雄だ!!って?」
「…そういうことだね、なんか恥ずかしい」
俺の大げさなセリフに斉木さんは照れながら軽く笑った。女の子に見せる笑顔とは違う、微かな笑み。できれば自分だけが見ていたい、なんて一瞬でも思ってしまったことに自分でも驚く。
「でもこの間本当に急にいなくなったからびっくりした。斉木さんって存在が目立つのに、気配消すの上手すぎない?」
「目立つなんてそんな…。空気になってその場を去る技、身に着けちゃうほど長い間拗らせてるってことだよぅ…」
力なく肩をすくめる仕草は、確かに華やかな美人というより無邪気に公園を駆け回る無垢な少女のようだった。