隙なしハイスペ女子大生は恋愛偏差値が低すぎる。


 それから3週間が過ぎ、早いもので4月が終わりを迎えようとしていた。斉木さんとはプレゼミとその翌日の講義が1コマ被っているだけなので顔を合わせることができるのは週にその2回だけ。中学生の頃の話を打ち明けてくれたことから、少しは俺のことを友達として見てくれているのかな、なんて期待はしていたのだが。

(まったく、前までと変わらない……)

 「戦争と平和」は2巻まで読み終わったものの連絡先も知らないので感想を伝える機会もない。

 講義では挨拶もしなければ自分と顔を合わせようともしない。プレゼミはどうしても少人数だから挨拶程度はするものの、やはり顔は強張ったままだ。

 
 そもそも、これ以上斉木さんに近づくのは危ない、と自分で自分を制していたのだ。これでいいんだ。慰めるようにして自分に言い聞かせる。

(好き、とかじゃないはず。ただ気になる存在というだけで、それは友達としての好意だよな)


 ただ、一つ気付いたことがある。プレゼミでは毎週1回、自分の興味のある分野の文献を読み、自分の意見を記述するブックレポートを提出しなければならない。そのブックレポートはゼミ生全員で読み合い、その場で少しの意見交換が行われる。

(斉木さんのレポート、今回も読みやすいな……)

 回された全員分のコピーに目を通すと、斉木さんのレポートがいつも圧倒的に上手にまとめられているのだ。それはきっとやはり、普段から活字に触れる習慣があるからこそなのだろう。

 これまであまり学業には前向きではなかった自分も、斉木さんのレポートには刺激を受け、自分ももっと頑張ろうという気になれた。
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