隙なしハイスペ女子大生は恋愛偏差値が低すぎる。
涼太さん
───涼太さんと出会ったのは、大学1年の夏休みだった。地方の大学に進学した高校の同級生2人と久しぶりに会えるということで、その日は銀座で映画を見たり買い物をしたりして楽しんだ。久しぶりの再会で話が弾み、女子3人の会話は途絶えることなく、夜ご飯を食べた後も銀座のはずれにあるカフェでコーヒーを飲むことにした。
9月の夜ということで幾分過ごしやすかったこともあり、カフェのテラスに席をとり、変わらず女子の会話に花を咲かせていたとき。
「お姉さんたち、めっちゃ綺麗だねー!」
男性の声。見上げると、スーツ姿の3人組の男性が立っていた。即座に私は緊張で身を固くして俯いた。
「うわ!ほんとみんな美人!」
もう1人の男性も声をあげた。明らかにお酒が入っているのがわかる。早く逃げたい、そんな思いでぎゅっと握った拳に力が入る。
最初に声をかけてきた男性が近くのテラス席から空いている椅子を引っ張ってきて私たちの近くに腰を下ろした。
「ねえ、今から飲みに行かない?もちろん奢るしさ。なんでも食べたい物言ってくれていいよ」
「私たちまだ18なんで!他当たってもらっていいですか」
男の人の扱いに慣れている友達が声を上げて断った。助かった、と思った。
「え!?まじで!?俺らおじさんじゃん!じゃあ、一緒にコーヒー飲もうっと」
絶望的なことに、お酒が入って気が大きくなっている男性は、図々しくもその場でモバイルオーダーを始めて私たちの席に居座ることを宣言した。
「えーちょっとー!困りますー!」
2人の友達はため息をついて嫌そうな態度を出しながらも、本心では嫌がっていないんだろうなというのが表情から見てとれた。というのも、3人ともピシッと整ったスーツを着用し、いかにも仕事のできる、即ち羽振りの良さそうな風貌だったからだろう。