隙なしハイスペ女子大生は恋愛偏差値が低すぎる。
どうしようどうしよう、と焦って手に汗をかき始めた頃。
「……きみ、大丈夫?」
ずっと俯いていた私に声をかけたのは、ずっと静観していたもう1人の男性だった。一瞬だけその人の顔を見上げると、とても優しそうな顔をしている。
「なあ、やっぱり迷惑だしさ、俺たちだけで飲みに行こうよ」
その男性が他の2人に声をかけて退店を促した。「えー」と残念そうな顔をするのは男性陣だけでなく私の友達も同じだった。
「…いえ、大丈夫ですから、気にしないでください」
自分がどういう顔をしているのか分からない。でもきっと苦虫を噛み潰したような顔をしていたんだと思う。下を向いていたから誰にも気づかれていないだろうということを願って。
それからしばらく私たちは一緒の時間を過ごした。私はどこかのタイミングで逃げられないだろうかと常に見計らっていたのだけど、なかなかそう上手くできなくて。
友達2人は楽しく話しているのに、私はというと話を振られても「はい」「あー…えっと」くらいしか言うことができない。本当はちゃんとまともに会話できたらいいのに。友達みたいに気楽に色々な男性と関われたらいいのに。
(きっと、めちゃくちゃ感じ悪い女って思われてるんだろうな……)
そんなことをいつまでも悶々と頭の中で考えていると、急に吐き気を感じてきた。でもそんなことも言い出せない私は、ただ目の前がぐるぐる回っているのを受け入れるしかない。
(あ……もう無理かも……)
目の前が暗くなり始めたその時。
「ねえ、もう帰ろっか。送ってくよ」
私の目の前で手をひらひらさせて、真向かいの席から声をかけてきた男性。それは、さっき酔った2人を制止した優しい顔の男性だった。