隙なしハイスペ女子大生は恋愛偏差値が低すぎる。
「…遠いので……一人で帰ります…」
ようやく解放されるかも、と思って少し気分を持ち直す。
「家、どこらへん?」
「井の頭線です……」
「俺、小田急線だから方角的に一緒だよ。タクシー手配するからもうちょっと待ってて」
そう言って男性は電話をかけに席を外した。私はバッグからハンカチを取り出し口元に当てる。その様子を見て、ようやく友達と男性らは私の異変に気付いたらしい。友達はしきりに心配して「気づかなくてごめん!」と謝ってくる。だけど、せっかくの再会をこんな形で盛り下げてしまったことが、私こそ申し訳なくて。
そうこうしているとタクシーがやってきたことを男性が教えてくれた。申し訳ないけれど、満員電車を何度も乗り継いで帰れる自信がなかったので甘えさせてもらうことにした。
男性と2人でタクシーに乗るということも自分にとってはかなりハードルの高いことだ。しかし、車内は暗いしある程度距離をとっておけばきっと大丈夫、そう言い聞かせて後部座席に乗り込んだ。
車が発車すると、すぐに男性は「良かったら飲んでね」とペットボトルの水を私に差し出した。タクシーを待っている間に近くのコンビニで買ってきてくれたのだろう。小さく一言だけお礼を言って受け取る。異常な緊張で喉がからからだったことに、水を飲んで初めて気がついた。
「少しは落ち着いた?近くなったら起こすから寝てていいよ」
男性はそう言うと、窓の外に顔を向け、ずっと黙っていてくれた。もちろん私はこんな状況で寝られるわけもなく。男性と反対方向に顔を向け、街灯に照らされた街並みをぼーっと眺めていた。