隙なしハイスペ女子大生は恋愛偏差値が低すぎる。
家の近くに差しかかる頃にはすっかり体調は戻り、改めて友達とこの男性に悪いことをしてしまったなと申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。
「あの…タクシー代…」
「いいからいいから、女子大生からそんなのもらえないって」
お金を差し出すも、笑われながら簡単に断られてしまう。でも…と困っていると男性は小さな紙を私に差し出した。
「裏にLINEのID書いてるからさ、もし気が向いたら連絡して。いらないなら捨てていいよ」
受け取ってよく見てみるとそれは会社の名前が載った名刺だった。誰でも知っている証券会社の名前。
「……すごいところの人だ」
聞こえるか聞こえないかの声でそう呟くと男性はぷっと吹き出した。
「一見すごいところなのかもしれないけど俺はすごくないから」
家の近くでタクシーを停めてもらい、車から降りると男性に深くお辞儀する。男性は「おやすみ」と言って軽く微笑んで手を振った。
小さくなるタクシーの姿が、完全に見えなくなるまでその場で見守る。
(大人、だったなぁ……)
中学以来、男の人と極力関わらないようにしてきたので比較対象はあまりないのだけれど。でも大学で騒いでいる男の人とは全然違う落ち着いた態度、さりげない気遣いや配慮はとても新鮮だった。と共に、あの人に対しての抵抗感というものがそもそも薄かったような気がするのはなんでだろう、と不思議でもあった。