隙なしハイスペ女子大生は恋愛偏差値が低すぎる。

失恋


「涼太さん」と呼ばれるその人の登場で、斉木さんは凍りついたように固まってしまった。俺は一体この状況をどうしたらいいものかと、軽くパニックになってしまい。そんな様子に気づいて涼太さんは慌てて俺に謝る。

「お邪魔しちゃってごめんね、じゃ」

 男性は軽く会釈をし、上品な笑みを軽く浮かべてその場を立ち去っていった。



「……斉木さん、大丈夫?」

 明らかに様子がおかしくなった斉木さんが心配で。きっと何か複雑な事情があるということも簡単に予想がつく。


(おそらく、以前付き合ってた人、なんだろうな)

 ”涼太さん”は、高そうなスーツに身を包みながらも控えめで物腰柔らかく、男の自分でも憧れるようなそんな人だった。きっと良い会社に勤めて仕事もよくできる人なんだろう。上品に整った外見にしても、斉木さんの隣を歩いていて何の違和感もない人だ。


 斉木さんは手元にあった水を一口飲むと、視線を合わせないまま力なく笑って言った。

「うん、急にごめんね。びっくりしちゃっただけ。……そろそろ行こっか」


 会計を済ませて東京駅へ向かう。一緒に肩を並べて歩いている時も斉木さんは、心ここにあらずといった様相で何を話しかけても曖昧な返事しか返ってこなかった。

 自分にできることは何かないだろうか、心配になってそう考えるも、きっと今の自分には何もない。ただ、黙って斉木さんの隣を歩くことしかできなかった。

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