隙なしハイスペ女子大生は恋愛偏差値が低すぎる。

 そして、その当日。

 渋谷駅で待ち合わせをした後、駅直結のお店でご飯を食べることにした。久しぶりの再会に近況を報告し合い、くだらない話に花を咲かせた。


 亜衣とは長い間付き合っていたから周りの友達はみんな自分たちの関係を知っている。既に別れていることも。だから妙に気を遣われているかもと思うこともあったが、俺自身が気にしていないという素振りを見せ続けた。

 しかしその一方で、亜衣はちょこちょここちらに目線を投げかけてくる。

 

(そもそも、なんで亜衣はこの集まりに着いてきてんだ……)


 友達として関係を続けると心に決めていても、普通、元カレを交ぜて楽しくご飯が食べられるものだろうか。繰り返しになるが、そんなポジティブに考えられるほど良い別れ方をしていないのに。


 それでも友達がいる手前、表面上は何でもないふうに装って適度に亜衣にも話しかけたりしてその場をやり過ごしていた。亜衣から話を振られることはなかったが、俺がそうやって亜衣のことを気遣うと、本人は心なしか嬉しそうにしていた。


 2時間ほどが過ぎ、お腹もいっぱいになったと誰もが思った頃に退店し、カラオケにでも移動しようかとわいわい店の前の歩道で話が弾む。ふと俺が輪から外れたタイミングを見計らったのか、背中をとんとんと叩かれる。

 振り返ると、亜衣の姿があった。亜衣は身長が低めであるのに加えて、きっと緊張しているのだろう。さらに小さくなって恥ずかしそうに下を向いている。高校の頃から変わらない亜衣のボブヘアに、ほんの一瞬だけ高校時代の記憶が蘇る。

「……どうした?」

 少し緊張して心臓の音が速くなる。でもそれは恋愛の昂りではなくって、この後亜衣は何と言い出すのか全く予想がつかないという、この場の状況によるものだろう。

 俺が黙って言葉を待っていると、亜衣は恥ずかしそうに小さな声で言った。

「……あのさ、もし良かったら、なんだけど、ちょっと二人で話したいなって…」

「……」

 何と返事すれば良いのかわからなかった。何の話をするのだろう。男と女としての話なのかそれとも友達としての話なのか、過去の話なのか未来に向けての話なのか。
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