【完結】ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜
――当然だ、と思いながらも。
リアムとは本当に何もなかったのだから。
確かにエリスはリアムから薬を盛られはしたが、それ以上のことはされなかった。
エリス本人は眠っていたため覚えてはいなかったが、オリビアはエリスにそう証言したし、医者もそれを証明してくれた。
そしてそのことを、エリスは馬車の中でアレクシスに確かに説明し、アレクシスも一度は納得を見せたのだ。
だがそれでもアレクシスは、自分の目で確かめたいと言って譲らなかった。
「さあ、次は前だ。……エリス、こっちを向け」
「……は、い」
以前と変わらぬ、淡々とした低い声。
けれどそこには、確かに緊張と不安、それにリアムへの怒りが混じっているように聞こえて、エリスは胸が締め付けられるような心地がした。
――恥ずかしい。
でもそれ以上に、やっぱり、アレクシスを安心させてあげたくて。
エリスは、ゆっくりと背後を振り返る。
すると否が応でも目に入る、アレクシスの厚い胸板。太い腕。割れた腹筋――と、それから……。
「――っ!」
刹那、エリスは本来の目的を忘れ、咄嗟に両手で顔を覆った。
と同時に、再びアレクシスに背を向けて、バシャンと湯舟にしゃがみこむ。
大きく膨れ上がったアレクシスの一物に、そうせざるを得なかった。
が、アレクシスはそれを許さない。
「隠すな、ちゃんと俺に見せるんだ」
そう耳元で囁いて、エリスの身体を抱き上げる。
そうして、エリスの身体を問答無用で浴室の淵に腰かけさせると、俯くエリスの顔を覗き込んだ。
「怖がるな。君が嫌がることはしない。腹の子に何かあってもいけないからな。――だが」