【完結】ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜

 ――当然だ、と思いながらも。

 リアムとは本当に何もなかったのだから。
 確かにエリスはリアムから薬を盛られはしたが、それ以上のことはされなかった。

 エリス本人は眠っていたため覚えてはいなかったが、オリビアはエリスにそう証言したし、医者もそれを証明してくれた。


 そしてそのことを、エリスは馬車の中でアレクシスに確かに説明し、アレクシスも一度は納得を見せたのだ。

 だがそれでもアレクシスは、自分の目で確かめたいと言って譲らなかった。


「さあ、次は前だ。……エリス、こっちを向け」

「……は、い」
 

 以前と変わらぬ、淡々とした低い声。

 けれどそこには、確かに緊張と不安、それにリアムへの怒りが混じっているように聞こえて、エリスは胸が締め付けられるような心地がした。


 ――恥ずかしい。

 でもそれ以上に、やっぱり、アレクシスを安心させてあげたくて。

 エリスは、ゆっくりと背後を振り返る。

 すると(いや)(おう)でも目に入る、アレクシスの厚い胸板。太い腕。割れた腹筋――と、それから……。


「――っ!」


 刹那、エリスは本来の目的を忘れ、咄嗟に両手で顔を覆った。
 と同時に、再びアレクシスに背を向けて、バシャンと湯舟にしゃがみこむ。

 大きく膨れ上がったアレクシスの一物に、そうせざるを得なかった。

 が、アレクシスはそれを許さない。

「隠すな、ちゃんと俺に見せるんだ」

 そう耳元で囁いて、エリスの身体を抱き上げる。

 そうして、エリスの身体を問答無用で浴室の淵に腰かけさせると、俯くエリスの顔を覗き込んだ。

「怖がるな。君が嫌がることはしない。腹の子に何かあってもいけないからな。――だが」
< 219 / 344 >

この作品をシェア

pagetop