Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜
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「マーガレットの仕立て屋 は軒先こそ控えめな雰囲気であったが、いったん中に足を踏み入れると、思わず感嘆の声を漏らさずにはいられないほどの美しい布で溢れかえっていた。
それらが高く天井まで積み上げられているさまは圧巻で、オリヴィアはつい、挨拶も忘れてすっかり四方に目を奪われていた。
帽子を脱いだマーガレットがいそいそと近付いて来たとき、オリヴィアは珍しい金糸入りの厚布に目を奪われていたところで、声を掛けられた驚きに飛び跳ねそうになった。
「ようこそ私のお店へ、レディ・ノースウッド」
マーガレットは上品に年上の貫禄を見せながら言った。
「オリヴィアとお呼びしてもいいかしら、マイ・レディ? わたくし、可愛いお客さまに対してはいつも、親愛の情を込めて名前で呼ばせていただきますの」
男二人が見守る中で、オリヴィアとマーガレットはきゅっと手を握り合った。
仕立て屋の女主人は慣れた目付きで、オリヴィアの全身をすばやく観察した。
オリヴィアの黒髪はつややかに輝いており、天使像がそのまま息を吹き返したような繊細な顔を華やかに飾っている。彼女はどちらかといえば小柄で、加えて華奢であったが、胸元は形よく豊かに肉付いていて色気を感じさせる……。
マーガレットはいわゆる美女と呼ばれる女たちを数え切れないほど見てきたが、オリヴィアは間違いなく、その中でも屈指の愛らしさを備えていた。
それも、磨けばもっと輝く種類の美しさだ。
実力のある仕立て屋の主人として、これ以上の客はいない。久しぶりに腕が鳴るのを感じて、マーガレットは満足げに微笑んだ。
「さ、まずはその変わったスカーフを取ってくださいな」
へんな形に胸を覆っている馬車の張り布について、マーガレットはしげなく却下を言い渡し、オリヴィアの首からそれを取り上げた。
大胆なレース使いのドレスに包まれたオリヴィアの胸元があらわになり、マーガレットはさらに目を輝かせる。
ローナンは満足げな笑みをもらした。
エドモンドはぎりりと歯軋りをした。