Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜
「では、お座りになって。どうぞスケッチをご覧になってくださいな。流行のものから伝統的なもの、貞淑なつくりのものもあれば大胆なものまで、何でもありますわよ」
意味ありげに片目をつぶって見せたマーガレットは、茶色い革張りの椅子に座ったオリヴィアの膝の上に、いくつものドレスのスケッチを束ねた冊子を広げる。
二人の男は、彼女たちの後ろに立ったままだ。
楽に足を崩しているローナンに対し、エドモンドはまるで、縄張りを守る狼のようにあたりに目を光らせながら入り口に立ち塞がっている。
オリヴィアは特に衣装にうるさい人間という訳ではなかったが、それでも都会育ちだから、目は肥えている方だ。そのオリヴィアから見ても、マーガレットのデザインはひじょうに垢抜けていて、上品なものばかりだった。
ぺらぺらとスケッチをめくっていくと、いくつか気に入ったものがあったので、オリヴィアはそれを引き抜いた。
「これが素敵だわ。どうでしょう?」
そのスケッチを覗き込むと、マーガレットはあからさまにしかめっ面をした。襟が厚く、顎までしっかり肌が隠れる種類のドレスだった。
「まあ、オリヴィア! これではあなたの美しさがすべて隠されてしまうわ。お若いのだから、こんな重苦しいドレスは駄目よ。あなたに似合うのはたとえばこちら……」
そう言うと、マーガレットは腰がきゅっと締まった古典的な型のドレスを一枚選んだ。もちろん胸元は肩に沿って大きく開けている。
──かなり、大きく。
「すけるような薄い布を何枚も重ね合わせて、これを作りましょう。襟元にレースをつけると、きっとあなたの白い肌が際立ちますわ」
「でも……」
それこそまさに、エドモンドが危惧している種類のドレスではないか。
オリヴィアは渋り、「では、こちらはどうかしら」と言いながら、もう一枚別のスケッチを仕立て屋の女主人に渡してみせた。
「マイ・ディア! なんてこと!」
マーガレットは叫びを上げた。
「もしあなたに目が三つあって、おでこに口が付いていたとしても、このドレスは差し上げられませんわ! こういった形は後家になった大女が仕方なく着るのですよ!」