Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜
最も衣装に詳しそうなのはヒューバートだった。
最も優しく、理解にあふれているのはローナンだった。
エドモンドはどう考えても適役とは思えなかった──が、彼はオリヴィアの夫だ。できるなら彼の好みに合わせたドレスを作りたかった。
「あの、ノースウッド伯爵……」
遠慮がちにオリヴィアが口を開くと、エドモンドがごくりと唾を飲み込むのが遠くからでも分かった。ひるみそうになる自分を叱咤して、オリヴィアは続けて懇願した。
「こちらに来て、手伝っていただけますか? あなたの助言も聞きたいのです」
できるだけ控え目に聞いたつもりだったが、オリヴィアの願い事は周囲の異常なる関心を引いたようで、その場が短い沈黙に包まれるのが分かった。
エドモンドが「いいだろう」と低い声で呟いてオリヴィアの前に進み出るまで、かなりの時間が掛かったように思える。残された二人の男たちは物欲しそうな目で彼の後姿を追っていた。
オリヴィアは早くも自らの選択を後悔しはじめていたが、いまさら言ったことを取り消すこともできない。
ゆっくりと、弱った獲物に近付こうとしている野犬ような足取りで歩いてくるエドモンドを、受け入れるしかなかった。
──マダム、私の忍耐を試すのもいい加減にしたらどうだ。
そんな風にうなりながらオリヴィアに対して癇癪を起こすエドモンドがありありと想像できた。
──私は婦人のドレス選びに付き合っていられるような暇な男とは違うのだ、マダム!
しかし、エドモンドに助言を借りて彼好みのドレスを作りたいのは本当だったし、彼以外の男に採寸の手助けをしてもらうのは嫌だった……。
髪を持ち上げてもらったり。
下着の紐を緩めてもらったりするのも。
最終的にエドモンドは、まるで鉄の鉛に足を引きずられているような速度でオリヴィアの目の前にやってきた。
そしてなせか瞳を輝かせているマーガレットの前で、エドモンドはゆっくりオリヴィアの耳元に口を近づけると、周りには聞こえないような低い声で呟いた。
「マダム、私の忍耐を試すのもいい加減にしたほうがいい」
オリヴィアは恐怖のデジャ・ヴに飛び上がりそうになった。そんな彼女の腕を片手で押さえたエドモンドは、苛立たしげに早口で続ける。
「私はあなたを他の男たちと共有できるほど心の広い男ではないんだ、マダム」