Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜
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カーテンは目にも止まらぬ速さで閉じられた。
おまけに、閉じられたカーテンの後ろからガタガタと大きな家具を動かすような騒音が聞こえてくる。多分、兄が侵入者を防ぐために裏で防波堤を築いているのだろう。
長い両手を伸ばして頭の後ろに組んだローナンは、ぽかんと立ち尽くしている兄の宿敵を横目に眺めながら、楽しげに唇の片端を上げて言った。
「どう、わが義姉上はなかなかの美人だろう?」
ヒューバートは閉じられたカーテンを凝視している。まるで、しつこく目を凝らしていれば、カーテンの奥を見透かせるようになるとでもいいたげに。
「そのようだな」
ぼそりとヒューバートは答えた。
「世間知らずだけど一生懸命で可愛いよ。屋敷の女主人としてはまだまだ学ぶところがあるけど、礼儀正しいし優しいし、理想の妻だよね。僕も彼女みたいなのが欲しいな」
「そのようだな」
と、再び答えたヒューバートは、やっとローナンの方に向き直った。
神経質そうなサウスウッド伯爵の瞳は、疑わしげにローナンを値踏みしている。対するローナンは、それを楽しんでいるような笑顔を崩さなかった。
「ねえ、僕たちは紳士だし、兄さんのように息を荒げながら守らなくちゃいけない奥さんがいるわけでもない。外に出ようじゃないか」
そう提案したローナンは、ヒューバートの肩に片手を置いた。
「それはそうと、舞踏会への招待は感謝するよ。バレット家の皆は喜んで参加するだろうね」