Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜
一体自分が何をしたいのか、エドモンドには分からなくなってきている。珍しいことだった。彼はいつだって明確に目標をかかげ、忠実にその道を進む男だった。
彼女を引き離したいのか、それとも妻として受け入れたいのか。
もちろんエドモンドの真の願いは、オリヴィアを受け入れることに他ならない。
太陽の光の下で彼女の耳元に愛をささやき、夜の帳に隠れて二人ですべてを分かち合いたかった。しかし、その後にくるであろう悲劇を思うと、エドモンドは足元から凍りついてしまう。
『バレット家の呪い』に科学的な証拠はなにもなかったが、エドモンドにとってこれは、肌の下にまで染み込んでいる『真実』だった。
現実、といった方が近いのかもしれない。
呪いが本当に存在する証拠はどこにもなかったが、かといって存在しない証拠もまた、どこにもないのだ。たとえオリヴィア自身が納得しているとしても、そんな不確かな賭けに彼女の命を賭けるわけにはいかなかった。
問題は──かといって、オリヴィアを他の男に渡すこともできないと自覚してしまったことだった。
ローナンの腕に彼女の胸元が触れそうになった瞬間。
そして、ヒューバートの軽薄な唇が彼女の手にふれた瞬間も。
我慢できなかった。
我慢がなんたるものであったのかさえ、ほとんど忘れかけていた。
そして、法律で成り立っているだけの夫の権利を主張して、彼女を自分のものだと公言しているのだ。
エドモンドは世界の全てのものからオリヴィアを守る準備があった。
ただ一つ、彼自身からオリヴィアを守ることだけが、あまりにも難しかった。