Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜

 ああ、小娘のドレス作りの手伝いをさせられて、男のプライドが傷付いているのだろうか!

 まずいことだ。
 とても。
 しかし、彼の怒りがどの程度なのか知りたくて、オリヴィアは恐る恐る目の前の鏡をのぞいた。

 背後にいるエドモンドの姿が、目の前の三枚の全身鏡にあらゆる角度で映っている。あらゆる……魔よけのガーゴイルのような恐ろしい顔をしたエドモンドが。

 オリヴィアは恐れおののき、緊張しながら、なんとか必死で謝罪の言葉を考えだそうとした。

「ごめんなさい、ノ、ノースウッド伯爵……」
 と、震える唇で、ゆっくりと提案する。「あの……ローナンに代わってもらいましょうか?」

 ガーゴイル、もとい、エドモンドの反応は凄まじかった。オリヴィアは彼の額に青白い血管が浮き出るのを見たほどだ。
 今夜は眠れないだろう。

「いいや、マダム──」
 地の底から響いてくるような低い声で、エドモンドは答えた。

「その必要はない」

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