Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜

 しかし当のバレット兄弟は、騒ぎを前にして静かににらみ合っていた。

「……この騒ぎに責任があるのが誰とは言わないけど」

 あちこちで高価なクリスタルが割れる音がするのを背後に、先に口を開いたのはローナンだった。
 エドモンドの肩は興奮したように激しく上下していて、視線はしつこいほどオリヴィアが逃げた方角に張り付いたままだ。

「彼女を追いかけるなら、決心をしてからにした方がいい。彼女を妻として受け入れるか、受け入れないのか。そうじゃなきゃまた同じ道化を続けるだけだ。違う?」

 笑顔を引っこめたローナンは、真剣な顔をして兄をのぞき込んだ。
 エドモンドは固い表情を変えようとはしない。
 周囲で起こっている壮絶な騒ぎも、彼の目には映っていないようだった。

 ──なんて頑固な。実の兄を前にして、ローナンはある意味、(あき)れよりも尊敬に近い思いを抱いた。

 とてもではないが、自分にこんな恋は出来ないだろう。
 こんな愛は(いだ)けない。

 こんな風に、自分を滅茶苦茶にしてしまうような。
 こんな風に、自分を破滅に追い込もうとするほどの、強い想いは。

 壊せないはずのものでさえ壊してしまうほどの、強い強い想いは。

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