Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜

 エドモンドはしばらく沈黙を守っていたが、オリヴィアの手を握っているのとは逆の方の手を膝の上で固く握りながら、じりじりとした思いで祖父を見据えていた。
 ──バレット家の呪いは、ないかもしれない。

 そんな告白を聞いてから、エドモンドの世界はぐるりと一転したも同じだった。
 子供の頃から身肌に感じ、恐れ、苦しんできた家族の悲劇の連続。オリヴィアと出会ってからは、ひと時も忘れられないほどの恐怖を、この呪いのせいで味わされてきた。
 今の今まで。

 それをずっと、ピートは隠してきたというのか?

 確かにエドモンドとピートは、世間でいう祖父と孫息子のような、温かい愛情で結ばれた関係を築くことはできずにいた。
 しょせんエドモンドにとってピートは、大人になってから突然現れた晴天の霹靂で、寝耳に水も当然の存在だったのだ。

 二人の関係はどこか他人然としていて、エドモンドはピートに寝食を提供し、ピートはエドモンドにそれなりの敬意を払い、領主としての権利を侵さないという暗黙の了解のうえに、あやうく成り立っている。
 たしかに……エドモンドは一度も、ピートと『バレット家の呪い』について話し合ったことはなかった。

 本当は聞くべきだったのだろうか。
 そうすれば、なにかが変わっていたのだろうか。

 どちらにしても、真実は今、明らかになろうとしている。

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