重いけどいいの?お嬢サマ
隠れてなんて……
私がどうしたいか、私は矢絃と……今までと同じようにいたいだけ。
矢絃と隠れて付き合うなんて、そんな関係になろうとは……思っていない。
「……矢絃のことは好きよ。でも、それは一緒にいる執事として、そして友達として……好きなの。家族と同じように」
「なら、恋愛の相手としては考えないってことだな?」
……恋愛の、相手──
"こんくれぇの実力しかねぇのに、お嬢の邪魔してくんじゃねぇよ"
"なに今更赤くなってんだよっ鈍感お嬢サマ?"
"何もされんな、絶対に"
「そう、ね」
なに、今の。
なんで私、
奏矢の顔や言葉が浮かんだの?
「ならうまく言葉を返すのが……って美青?どうした?他にも何かあるなら……」
「っない。ないわ」
一瞬、慌てたことをハーブティーを飲みながら誤魔化す。けど、動揺しているのかカップを持つ手が微かに震えていて、飲み干してからすぐに手をテーブルの下へ持っていった。
そんな私に訝しげな顔をする慧。
だけど、詮索せず笑ってくれるのが慧。
「ま、弟くんとのことを話してくれただけでもわたしは嬉しいさ。返事は……いつでも言えるのは利点なんだ、焦らず美青らしい言葉を見つけられることをわたしは祈ってるよ」
「……ありがと」
今の奏矢のことは、自分の中で整理するとして。
矢絃のことは、慧に話して良かったなと思う。