ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
「なんだか、絵本の世界に迷い込んだような気分です」

「大人も楽しめるっていうのは、本当ですね」

 ケーキも紅茶も、味も抜群に美味しくて、私たちはすっかり『森のケーキ屋さん』を堪能していた。

「そう言えば。今日はマニキュアしてるんですね」

 私の指先に目を向けて、黒崎さんは言った。そこには、肌なじみの良いピンクベージュのマニキュアが塗られている。

「っ、はい。たまには塗ってみてもいいかなって思いまして……」

 私はレジのアルバイトで指を使うこともあり、ネイルなど指先のお洒落をすることはない。だが黒崎さんに会うならば、少しでもお洒落したいと思ったのだ。

 とはいえ、ネイルチップだと剥がれた時に子どもが飲み込むリスクがある。そのため、子どもに害のない天然成分で作られた「子育て中のママ用」のマニキュアを塗ってみたのである。

 しかし、普通のマニキュアとは違ってこのマニキュアはかなり色が薄い。正直、黒崎さんに気づいてもらえるとは思ってもみなかった。

 それと同時に、彼が私の指先まで見てくれていることを知って、妙に胸がドキドキするのを感じていた。
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