ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
「可愛い色で、とっても似合ってますよ」
「……っ!?」
黒崎さんのひとことに、イスから転げ落ちそうになる。ちらりと彼の顔を見ると、黒崎さんは穏やかに笑っていた。
「っ、ありがとうございます」
些細なことだけれども、黒崎さんに褒められるのは嬉しい。
(でも……同じように、黒崎さんが『可愛い』って褒める相手が他にいるとしたら?)
そう考えた途端、胸がチクリと痛むのを感じた。
□
「ケーキ、美味しかったですね」
ケーキと紅茶を楽しんだ私たちは、店を出てから駅に向けて歩いていた。
「ここだったら、近いので気軽に来れそうですね」
「ふふ、たしかに。いいとこを知れて、良かったです」
また今度、一緒に来ませんか?
そんな言葉が喉まで出かかるが、なかなか言い出せない。
そうこうしているうちに、駅の改札前まで来てしまった。私と黒崎さんは別方面の電車に乗るため、ここでお別れだ。
「橘さん、今日もありがとうございました」
「いえ、こちらこそ。ケーキと紅茶ご馳走様でした」
私も支払うと言ったものの、結局『森のケーキ屋さん』での飲食代は黒崎さんが払ってくれた。私はあらためて、お礼を言った。
「いえ、大したことじゃないので……」
そこまで言って、黒崎さんは何か言いたげに口をモゴモゴさせる。私が言葉の続きを待っていると、彼はなぜか目を逸らしてしまった。
「その、良かったら……またこんな感じで……」
黒崎さんがそこまで言いかけたところで、どこからか女性の声が聞こえてきた。
「あれ、誰かと思えば大和じゃない!」
「っ、紫音……なんで、こんなとこにいるんだよ」
「仕事帰りに決まってんじゃない。久しぶりね。……あら?」
女性の視線が、黒崎さんから私へと映る。彼女は芸能人のように整った顔立ちであり、目が合うだけでドキリとしてしまう。
「初めまして、大和の幼なじみの、宇城( うき)紫音(しおん)です」
自信を湛えた笑みを浮かべて、宇城さんは私に挨拶した。
「……っ!?」
黒崎さんのひとことに、イスから転げ落ちそうになる。ちらりと彼の顔を見ると、黒崎さんは穏やかに笑っていた。
「っ、ありがとうございます」
些細なことだけれども、黒崎さんに褒められるのは嬉しい。
(でも……同じように、黒崎さんが『可愛い』って褒める相手が他にいるとしたら?)
そう考えた途端、胸がチクリと痛むのを感じた。
□
「ケーキ、美味しかったですね」
ケーキと紅茶を楽しんだ私たちは、店を出てから駅に向けて歩いていた。
「ここだったら、近いので気軽に来れそうですね」
「ふふ、たしかに。いいとこを知れて、良かったです」
また今度、一緒に来ませんか?
そんな言葉が喉まで出かかるが、なかなか言い出せない。
そうこうしているうちに、駅の改札前まで来てしまった。私と黒崎さんは別方面の電車に乗るため、ここでお別れだ。
「橘さん、今日もありがとうございました」
「いえ、こちらこそ。ケーキと紅茶ご馳走様でした」
私も支払うと言ったものの、結局『森のケーキ屋さん』での飲食代は黒崎さんが払ってくれた。私はあらためて、お礼を言った。
「いえ、大したことじゃないので……」
そこまで言って、黒崎さんは何か言いたげに口をモゴモゴさせる。私が言葉の続きを待っていると、彼はなぜか目を逸らしてしまった。
「その、良かったら……またこんな感じで……」
黒崎さんがそこまで言いかけたところで、どこからか女性の声が聞こえてきた。
「あれ、誰かと思えば大和じゃない!」
「っ、紫音……なんで、こんなとこにいるんだよ」
「仕事帰りに決まってんじゃない。久しぶりね。……あら?」
女性の視線が、黒崎さんから私へと映る。彼女は芸能人のように整った顔立ちであり、目が合うだけでドキリとしてしまう。
「初めまして、大和の幼なじみの、宇城( うき)紫音(しおん)です」
自信を湛えた笑みを浮かべて、宇城さんは私に挨拶した。