ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
 黒崎さんが広げたノートを見ると、そこには学童に来た子どもたちの名前と、特徴が書かれていた。子どもと仲良くなるための、彼なりの努力が垣間見える。

 そんな黒崎さんの力になりたいと思うのに、時間はかからなかった。

「黒崎さん、その……」

「?」

「私、実は元々保育士をしてて……学童に限らず、子どもと触れ合うボランティアによく参加してるんです。子どもとの接し方とかでアドバイスできることもあると思うので……良ければ、予定が合う時は一緒に参加しませんか?」

 言った後になってから、おせっかいがすぎてしまったような気がして急に恥ずかしくなる。私のひとことに、黒崎さんも驚いたように目を丸くしていた。

「すみません、余計なことを……」

 私がそう言いかけたところで、黒崎さんはイスから急に立ち上がった。

「っ、ぜひお願いします、先生!!」

 黒崎さんは見事な直角のお辞儀をして、私に言った。

「く、黒崎さん……っ、大袈裟ですよ、頭をあげてください」

「いえいえ! ご指導ご鞭撻、よろしくお願いします!」

 思いっきり頭を下げる黒崎さんと、そんな彼の前でオロオロする私。そんな私たちを見て、事務室にやって来た他のスタッフたちがざわついたのは言うまでもない。
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