ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
「とりあえず、湿っぽい話はここまでにして。花火が始まるまで、お参りと屋台巡りしない?」

「賛成!」

「う、うん」

 気づけば私たちは、神社の鳥居の前にまでたどり着いていた。

 私たちが訪れた合縁神社では、毎年六月に夏祭りが開催される。同じ日に花火大会が行われることもあり、例年多くの参加者が訪れる。

 花火と屋台ももちろん楽しみのひとつだが、私たち三人の目的は……。

「悪縁、ばっさり切り落としてもらわなきゃ」

「私は縁結びかなあ。そろそろ彼氏欲しいもん」

 桃子と実夏は、口々に言った。

 合縁神社は、縁結びと縁切りの両方を司る神様が祀られている珍しい神社だ。

 話によると、ここの神様は年に一度、縁結びか縁切りのいずれかの願いを叶えてくれるという。つまり、どちらか一方を選ばねばならないのだ。

「優花も、縁切りしてあんな職場のことさっさと忘れちゃいなよ」

「ふふっ、そうだね」

 三人で会話ができるのが不思議なほどに、境内は人でごった返していた。賑やかなお囃子が聞こえる中、歩みを進める。

「お参り行くのってこのまま真っ直ぐで良かったよね? ……って、あれ?」

 ふと気がつくと、桃子も実夏も近くにいなかった。どうやら知らぬ間に、私は二人とはぐれてしまったようだ。

 まさか……私、迷子になっちゃった?
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