ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
 嫌な予感がして、すぐに桃子に電話するものの、不出。実夏も、言わずもがな。

(合流するなら目印があるほうが良いし、いっそ鳥居まで戻ったほうが良いかな?)

 人混みの中では止まれないので、私は歩きながら辺りをキョロキョロと見回す。しかし、二人の姿はやはり見当たらない。

 ドンッ!

「きゃっ!?」

 どうしようかと迷いながら歩いていた時、すれ違いざま誰かに強く身体をぶつけられてしまった。そのまま、大きくよろけて地面に倒れそうになる。

(危ない……!)

 そう思った瞬間。

 私の身体は、頼もしい腕に支えられていた。

「大丈夫ですか? ……って、橘さん!?」

「え……黒崎さん?」

 顔を突合せて、二人そろって驚いた表情になる。どうやら彼も、私と鉢合わせするのは想定外だったようだ。

「とりあえず、端に寄りましょうか」

「あ、ありがとうございます」

 黒崎さんに付き添われ、私は人通りの少ない場所に移動した。

「さっきぶつかられてましたけど、怪我はないですか?」

「はい、大丈夫です。ただ……友達とはぐれちゃって」

 まさか大人になって迷子になるなんて、思ってもみなかった。黒崎さんもさぞ驚いているに違いない。

 そんなことを思っていたものの、黒崎さんの反応は意外なものだった。

「実は……俺もです」

「え?」

「いや、何と言うか、一緒に来たダチ二人と、いつの間にかはぐれまして」

 なんと、黒崎さんも私と同じく迷子になっていたのだ。
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