ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
「待って、じゃあ夏祭りの時に二人で一緒にいたのは何?」

「あれは偶然だよ。桃子たちとはぐれて困ってた時、たまたま助けてくれただけ」

「でも、二人でお祭り楽しんだんでしょ?」

「それは……そうだけど」

「じゃあ実質、付き合ってるようなものじゃない? 黒崎さん、彼女いないんでしょ?」

「……知らないよ、そんなの」

 黒崎さんと話す話題は子どもに関することが多く、そこまで踏み込んだ話をしたことはない。それに、プライベートなことを聞く勇気もなかった。

「彼女持ちの男なんて狙ってもムダよ、優花。そこはきちんと聞かないと。まあ……どうしようもない奴は、聞いても嘘ついてくるんだけどね」

「は、はは……」

 昔、元彼に二股をされた過去を持つ桃子は、忌々しげに呟く。殺気立った目つきには、元彼に対する強い怒りが滲んでいた。

「でも、あんだけ仲良さげなら……彼女いるか聞いたら黒崎さんも察してくれて、すんなりお付き合いまでいけそうだよね」

「まあ、たしかに」

「っ、ちょっと、何言ってんの……!」

 実夏のひとことに、今度は私が飲み物を吹き出しそうになる。
< 86 / 145 >

この作品をシェア

pagetop