ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
「何も、告白しろとは言ってないじゃない。もうひと押し、それだけよ」

「……っ、無理、絶対無理……!」

 「付き合っている人はいますか?」と自分が黒崎さんに尋ねる場面を想像するだけで、堪らなく恥ずかしい。

 仮に口を滑らせて彼に聞いたとしても、返事を聞く前に、きっと私は逃げ出すだろう。近くに穴あれば、全力疾走で飛び込むに違いない。

「うーん。どうしたものか……そうだ!」

 何かを思いついたようで、実夏はスマートフォンを何やら操作し始めた。

「この前まあ君と話してたんだけど、今度みんなでグランピング行かない?」

 実夏が私たちに見せたのは、隣県にあるキャンプ場の公式サイトだった。

「六人で食事するなら、黒崎さんの情報を聞き出すチャンスもあるだろうし、面と向かって聞くより楽じゃない?」

「な、なるほど」

「どうして、そんなトリッキーな作戦が瞬時に思いつくのよ……いや、普通に凄いけど」

(お付き合いしてる人がいるか……言われてみれば、たしかに気になるかも)

「どうする? 優花」

「じゃあ……ぜひ」

「よし! だったらご飯食べながら、作戦会議ね。まずはバーベキューする時の席決めからね」

 こうして、あれよあれよという間に、トリプルデートは決まったのである。
< 87 / 145 >

この作品をシェア

pagetop