ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女


「天気も晴れですし高速道路の渋滞もなくて、良かったですね」

 車を運転しながら、黒崎さんは言った。

 グランピング当日。六人乗りの車に乗った私たちは、キャンプ場に向かっていた。黒崎さんは行き道の運転を担当しており、私は助手席に座っている。彼の隣に座るだけで、私はほんの少し緊張していた。

「そうだ黒崎さん、おやつ食べますか? さっき寄ったコンビニで、グミと飴を買ったんですけど」

 黒崎さんが運転していても食べられるように、私は一口サイズのお菓子を選んで買っていた。

「えっ、良いんですか?」

「もちろん。グミが杏仁豆腐味で、飴がプリン味なんですけど、どっちにしますか?」

「うーん、どっちも美味しそうだな。じゃあ、グミでお願いします。その……適当に食べさせてもらえますか?」

「ふふっ、分かりました」

 私はグミの袋を開封して、グミを一粒黒崎さんの口に運んだ。

「美味しいですか?」

「はい、食感はグミなのに、味はどう考えても杏仁豆腐で……歯ごたえのある杏仁豆腐というか、不思議な感じです」

「ふふっ、私も食べてみよっと」

 グミを一粒口に入れながら、何気なくルームミラーに目を向けると、鏡越しにニヤついた桃子と実夏と目が合った。二人の顔を見て、ついグミを吐き出しそうになる。

「なっ、何? どうしたの?」

「ううん、仲が良いみたいで何よりと思っただけよ」

「っ……事故を起こしかねないんで、急にびっくりするようなことを言わないでくださいよ」

(びっくりするって言うのは……私のことを少しは意識してくれてるってこと?)

 恥ずかしくて、黒崎さんの表情を確認することはできない。しかし私は、淡い期待を密かに抱き始めていた。
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