ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女


「そう言えば、私たちは保育の短大時代のクラスメイトなんですけど、三人ってどういう繋がりなんですか?」

 バーベキューも終盤に差し掛かったところで、桃子は言った。

「家が近所の幼なじみですね。あとは、小学校まではずっと同じ柔道教室に通ってたんですよ」

 緑茶を桃子のコップに注ぎながら、香坂さんは教えてくれた。

 黒崎さんたち三人が、互いに強めの冗談を言い合っているところは何度も目にしていたので、私は内心なるほど、と妙に納得していた。

「俺と松葉は小学校卒業を機に辞めましたけど、大和だけは大学まで続けてたんです。新聞のスポーツ欄に載ってるのを見た時は、さすがにびっくりしましたよ」

「そんなの、だいぶ昔の話だろ」

「新聞……というのは?」

「大和、大学の時に柔道の全国大会で優勝したんですよ。ほら」

 加賀見さんはスマートフォンで、当時の新聞の画像を見せてくれた。そこには、対戦相手に一本背負いを決める黒崎さんの写真が大々的に載っていた。

「わあ、凄い……!」

「いえ、その……優勝したって言っても、運が良かっただけというか……」

「柔道の実業団のある会社から、めちゃくちゃ声かかってヤツがよく言うわ」

「っ、余計なことを……!」

 黒崎さんの経歴があまりにも凄すぎて、私は内心圧倒されていた。

「それを全部断って警察官になるって聞いた時は、新聞に載ってたのを見た時よりもびっくりしましたよ」

 スマートフォンの画面を閉じながら、加賀見さんは言った。

「たしかに。そう言えば、なんで大和って警察官選んだの?」

「別に……いいだろ」

 香坂さんの問いに、黒崎さんは言葉を濁す。彼は答えたくないのか、少し眉間に皺を寄せていた。

(他人に聞かれたくないこともあるだろうし、このことは触れないほうが良いかもしれないわね)

 そう心に留めておきつつ、私はコップのお茶をひとくち飲んだ。
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