ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女


「割と歩きましたけど、靴擦れとか大丈夫ですか?」

「はい、履き慣れたスニーカーなので、ご心配なく」

 私と黒崎さんは、森の小道を歩いていた。

 バーベキューの後片付けを終えたあと、私たちは夕方まで自由に時間を過ごすことになっていた。

 とはいえ、「自由時間」というのは名ばかりで、実際は意中の彼と二人きりで過ごす言わば「デートタイム」である。桃子も実夏も、彼を連れて早々にバンガローから出て行ったのだった。

 そして私と黒崎さんは、お散歩マップ片手に、森を散策してみることにしたのである。

「次の道、右に行ったら展望台で、左に行ったら川に着くみたいです。どっちに行きますか?」

「たしか、桃子は香坂さんと展望台に行くって言ってたので、川にしませんか?」

「そうですね……邪魔するのも悪いですし」

 邪魔するのも悪い。黒崎さんのその言葉は、桃子と香坂さんが「いい雰囲気」なのを、彼がそれとなく察していることを示していた。

(私と二人きりでいることを、黒崎さんはどう思ってるのかしら?)

 そんなことを考えて歩いているうちに、私たちは小さな川に辿り着いた。

 魚は見当たらないものの、川の水は透明で澄んでいる。私たちは、ここで少し休憩することにした。
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