ベンチャーCEOの想い溢れる初恋婚 溺れるほどの一途なキスを君に
と、そこへピーンポォーンと間延びしたインターフォンが鳴った。
「噂をすれば、あいつか」
蒼也がドアを細く開けると、悠輝が体をねじ込むように入ってきた。
「やっほー、来たよ」
「いらっしゃい」と、キッチンから翠が声をかける。
「あれ、翠ちゃん? なんで?」と、パンダでも見かけたみたいに声が裏返る。「もしかして最悪のタイミング?」
「いつも勝手に押しかけてくるくせに今さらだろ。ここはおまえのスタジオじゃないんだぞ」
嫌味を吐く蒼也の脇を抜けてキッチンへ入ってきた悠輝はカウンターに箱を置いた。
「案件がらみのイベントがあってさ。スポンサーさんからスイーツを大量にもらっちゃってね。こんなの一人じゃ食べきれないから持ってきたんだ」
「わあ、ありがとうございます」と、翠は悠輝の開けた箱をのぞき込む。「そういえば、コンビニスイーツでコラボしたってニュース見ましたよ」
「そうそう、それの新作発表会だったんだ。来週発売なんでね、今はまだ市販されてないやつだよ」
「そんなすごいのいただいちゃっていいんですか」
「どうぞどうぞ。男二人で食べたら悲しくなるところだったから、翠ちゃんがいてくれて助かったよ」
会話が弾んでいるところで蒼也の視線を感じた悠輝がトーンダウンする。
「でも、お邪魔だったよね。せっかく許嫁を家に呼んだのに」
「そんなことないさ」と、蒼也はぶっきらぼうにつぶやいた。「もう許嫁じゃないんだし」
「はあ? どういうこと?」と、悠輝の目が飛び出しそうなほど丸くなる。「もしかして別れ話の途中だったとか? え、嘘でしょ。止めてよ。なんで、どうして、信じられない。ありえないでしょ。冗談だよね」
焦る悠輝の表情に、思わず二人とも吹き出す。
「え、何、どうしたのさ」
「俺たち結婚したんだよ」
蒼也の種明かしに、悠輝は池の鯉みたいに口をパクパクさせながら二人を見る。
「はあ? なんだよ、びっくりさせないでよ、もう。息が止まるかと思ったよ。ていうか、それはそれでおめでとうだけど、急にどうしたんだよ。今まで何にもなかったのに」
「実は、おまえにも話しておかなくちゃいけない事情があってさ」
蒼也が言葉を濁すと、悠輝は深刻さを察した表情になってエスプレッソマシンの前に立った。
「せっかくだから話を聞く前にコーヒー入れるよ。翠ちゃんもデカフェのカプチーノでいい?」
「あ、あの、実はさっきコーヒーは飲んだので」
「じゃあ、爽やか系のアイスティーでも作ろうか」
「私、やりますよ」
手伝おうとする翠を制して悠輝が器具をそろえる。
「大丈夫。このマンションのことは僕の方が詳しいからね」
「何の自慢してんだ、おまえ」と、蒼也がにらみつける。
「おお、こわ」
そんな仲のいい二人のやりとりを翠は微笑みながら眺めていた。
「噂をすれば、あいつか」
蒼也がドアを細く開けると、悠輝が体をねじ込むように入ってきた。
「やっほー、来たよ」
「いらっしゃい」と、キッチンから翠が声をかける。
「あれ、翠ちゃん? なんで?」と、パンダでも見かけたみたいに声が裏返る。「もしかして最悪のタイミング?」
「いつも勝手に押しかけてくるくせに今さらだろ。ここはおまえのスタジオじゃないんだぞ」
嫌味を吐く蒼也の脇を抜けてキッチンへ入ってきた悠輝はカウンターに箱を置いた。
「案件がらみのイベントがあってさ。スポンサーさんからスイーツを大量にもらっちゃってね。こんなの一人じゃ食べきれないから持ってきたんだ」
「わあ、ありがとうございます」と、翠は悠輝の開けた箱をのぞき込む。「そういえば、コンビニスイーツでコラボしたってニュース見ましたよ」
「そうそう、それの新作発表会だったんだ。来週発売なんでね、今はまだ市販されてないやつだよ」
「そんなすごいのいただいちゃっていいんですか」
「どうぞどうぞ。男二人で食べたら悲しくなるところだったから、翠ちゃんがいてくれて助かったよ」
会話が弾んでいるところで蒼也の視線を感じた悠輝がトーンダウンする。
「でも、お邪魔だったよね。せっかく許嫁を家に呼んだのに」
「そんなことないさ」と、蒼也はぶっきらぼうにつぶやいた。「もう許嫁じゃないんだし」
「はあ? どういうこと?」と、悠輝の目が飛び出しそうなほど丸くなる。「もしかして別れ話の途中だったとか? え、嘘でしょ。止めてよ。なんで、どうして、信じられない。ありえないでしょ。冗談だよね」
焦る悠輝の表情に、思わず二人とも吹き出す。
「え、何、どうしたのさ」
「俺たち結婚したんだよ」
蒼也の種明かしに、悠輝は池の鯉みたいに口をパクパクさせながら二人を見る。
「はあ? なんだよ、びっくりさせないでよ、もう。息が止まるかと思ったよ。ていうか、それはそれでおめでとうだけど、急にどうしたんだよ。今まで何にもなかったのに」
「実は、おまえにも話しておかなくちゃいけない事情があってさ」
蒼也が言葉を濁すと、悠輝は深刻さを察した表情になってエスプレッソマシンの前に立った。
「せっかくだから話を聞く前にコーヒー入れるよ。翠ちゃんもデカフェのカプチーノでいい?」
「あ、あの、実はさっきコーヒーは飲んだので」
「じゃあ、爽やか系のアイスティーでも作ろうか」
「私、やりますよ」
手伝おうとする翠を制して悠輝が器具をそろえる。
「大丈夫。このマンションのことは僕の方が詳しいからね」
「何の自慢してんだ、おまえ」と、蒼也がにらみつける。
「おお、こわ」
そんな仲のいい二人のやりとりを翠は微笑みながら眺めていた。