ベンチャーCEOの想い溢れる初恋婚 溺れるほどの一途なキスを君に
第7章 愛は理由を超えて
朝六時、起床を見計らっていたかのように須垣のスマホに着信があった。
画面に表示された相手の名前を見て、ゆるんだ笑みを浮かべながら通話に出る。
「こんな早い時間に何か用か?」
「昨日のご提案ですけど、まだ間に合いますか?」
「旦那を助けたいってことか。殊勝な心がけ、結構だな」
「私はどうすればいいですか」
「今から出てくることはできるのか?」
「構いません。夫は昨夜も遅かったので、ぐっすり寝てますから」
「なら、そっちに迎えに行くよ」
「分かりました。それでは……」
シャワーを浴びてベタつく寝汗を流し、相手が待ち合わせ場所に指定した公園にコンパクトカーを向ける。
渋滞が始まりだした時間帯で思ったよりも時間がかかってしまったが、公園入り口の木陰に、淡いブルーの長袖ブラウスにデニム姿の翠が立っていた。
車を寄せると、後部座席のドアを開けようとするので、須垣は苦笑しながら前を指した。
「助手席に乗れよ」
口をとがらせながらも、翠はおとなしく指示に従った。
「スマホはオフにしてそこの箱に入れてくれ」
須垣はコンソールボックスの金属製の箱を指す。
電波遮断効果のある素材だ。
「こんなことをしても二台目を持ってたら意味ないんだけどな」
スマホをしまおうとした翠の手がピクリと止まる。
顔をのぞきこんで須垣が笑う。
「あんた、正直だよな。隠さないで入れておいてくれ」
翠は追跡タグをデニムのポケットから出してスマホと一緒に箱に入れた。
「そんなものまで用意してるとはね。大冒険だな」
皮肉な笑いを浮かべながら須垣が車を急発進させた。
「小さな車でびっくりしたか?」
「いえ、べつに」
「車に興味がなくてね。ただの移動手段に金を使うのが馬鹿馬鹿しい。それに……」と、須垣は翠の膝に手を伸ばした。「狭い方が、こういうときに便利だろ」
「運転中は危ないですよ」と、翠が手を払いのける。「目的地に着いてからにしてください」
「で、どこへ行くんだ?」
翠は港の見えるホテルを指定した。
「旦那のホテルはさすがに嫌か」と、鼻で笑いながら須垣は高速道路に車を乗り入れた。
下り方向もトラックが多く、流れてはいるものの、あまり速度は上がらない。
目的地に着くまで、話すための時間はたっぷりとあった。
「あんたは仕事は休みなのか? 無断欠勤でクビになっても、俺はそこまで責任は取れないぞ」
「今は夏休み期間の預かり保育なので、職員が交代で休みを取っているんです。あなたに心配される筋合いはないので、気にしないでください」
「ふうん、そうかい。なら、じっくりと楽しんでやるとするか」
片手でステアリングを握って渋滞の先をにらみつけていると、ドアにもたれるように翠が須垣に体を向けた。
「追跡を警戒したり、ずいぶん手慣れてるんですね。いつもこんなふうに女性を陥れているんですか?」
「言っただろ、情報は力だって。情報を持つ者が主導権を握ってねじ伏せる」
「力ずくで何でも手に入ると思ってるんですね」
「そういう軽蔑は、俺には褒め言葉だな」
画面に表示された相手の名前を見て、ゆるんだ笑みを浮かべながら通話に出る。
「こんな早い時間に何か用か?」
「昨日のご提案ですけど、まだ間に合いますか?」
「旦那を助けたいってことか。殊勝な心がけ、結構だな」
「私はどうすればいいですか」
「今から出てくることはできるのか?」
「構いません。夫は昨夜も遅かったので、ぐっすり寝てますから」
「なら、そっちに迎えに行くよ」
「分かりました。それでは……」
シャワーを浴びてベタつく寝汗を流し、相手が待ち合わせ場所に指定した公園にコンパクトカーを向ける。
渋滞が始まりだした時間帯で思ったよりも時間がかかってしまったが、公園入り口の木陰に、淡いブルーの長袖ブラウスにデニム姿の翠が立っていた。
車を寄せると、後部座席のドアを開けようとするので、須垣は苦笑しながら前を指した。
「助手席に乗れよ」
口をとがらせながらも、翠はおとなしく指示に従った。
「スマホはオフにしてそこの箱に入れてくれ」
須垣はコンソールボックスの金属製の箱を指す。
電波遮断効果のある素材だ。
「こんなことをしても二台目を持ってたら意味ないんだけどな」
スマホをしまおうとした翠の手がピクリと止まる。
顔をのぞきこんで須垣が笑う。
「あんた、正直だよな。隠さないで入れておいてくれ」
翠は追跡タグをデニムのポケットから出してスマホと一緒に箱に入れた。
「そんなものまで用意してるとはね。大冒険だな」
皮肉な笑いを浮かべながら須垣が車を急発進させた。
「小さな車でびっくりしたか?」
「いえ、べつに」
「車に興味がなくてね。ただの移動手段に金を使うのが馬鹿馬鹿しい。それに……」と、須垣は翠の膝に手を伸ばした。「狭い方が、こういうときに便利だろ」
「運転中は危ないですよ」と、翠が手を払いのける。「目的地に着いてからにしてください」
「で、どこへ行くんだ?」
翠は港の見えるホテルを指定した。
「旦那のホテルはさすがに嫌か」と、鼻で笑いながら須垣は高速道路に車を乗り入れた。
下り方向もトラックが多く、流れてはいるものの、あまり速度は上がらない。
目的地に着くまで、話すための時間はたっぷりとあった。
「あんたは仕事は休みなのか? 無断欠勤でクビになっても、俺はそこまで責任は取れないぞ」
「今は夏休み期間の預かり保育なので、職員が交代で休みを取っているんです。あなたに心配される筋合いはないので、気にしないでください」
「ふうん、そうかい。なら、じっくりと楽しんでやるとするか」
片手でステアリングを握って渋滞の先をにらみつけていると、ドアにもたれるように翠が須垣に体を向けた。
「追跡を警戒したり、ずいぶん手慣れてるんですね。いつもこんなふうに女性を陥れているんですか?」
「言っただろ、情報は力だって。情報を持つ者が主導権を握ってねじ伏せる」
「力ずくで何でも手に入ると思ってるんですね」
「そういう軽蔑は、俺には褒め言葉だな」