社長の推しは、地味メガネのわたしでした。
事情
総務課を出た私は足早に、エレベーターへと向かう。エレベーター前には、これから向かうであろう飲み屋街の話をする男性陣や、おしゃれなレストランやカフェの話に花を咲かせるOL達がガヤガヤと集まっている。心なしかいつもより華やいで見えるのは、今日が金曜日だからだろうか。
そんな一団が、エントランスホール行きのエレベーターへ乗り込むのを、壁際で見送り、上階行きのボタンを押す。すると、すぐに上りのエレベーターは到着した。中に誰も居ないことを確認して乗り込む。そして、押した最上階のボタン。まさか自分がこのボタンを押す日が来ようとは想像すらしていなかった。
ゆっくり上っていくエレベーター。夕陽が沈む街並みを眺め、今の自分の状況にため息をこぼす。
どんな事をしてでもクビだけは回避しなければならない。そうでなければ、一生妹のお世話になる可能性すらある。この不況では、好条件で雇ってくれる会社など皆無だ。それに、私達姉妹を育ててくれた叔父にも申し訳ない。
中学生の時、夫婦水入らずの旅行中、事故にあい両親が他界した。残された姉妹二人を無条件に受け入れ、自分の子供と同じように愛してくれた叔父夫婦。両親の葬儀で、泣きじゃくる妹と必死に涙を堪えていた私に、叔父は言ってくれた。
『――もう心配はいらない。穂花ちゃん、泣いていいんだ』と。
叔父の言葉にどんなに救われたことか。そして、その言葉通り、独り立ちするまで、なに不自由無く育ててくれた。
これ以上、優しい叔父に甘える訳にはいかない。自分でどうにかするしかない。
ポンっという音を鳴らし、目の前の扉が開く。長い廊下の先を見つめ、一歩を踏み出した。
そんな一団が、エントランスホール行きのエレベーターへ乗り込むのを、壁際で見送り、上階行きのボタンを押す。すると、すぐに上りのエレベーターは到着した。中に誰も居ないことを確認して乗り込む。そして、押した最上階のボタン。まさか自分がこのボタンを押す日が来ようとは想像すらしていなかった。
ゆっくり上っていくエレベーター。夕陽が沈む街並みを眺め、今の自分の状況にため息をこぼす。
どんな事をしてでもクビだけは回避しなければならない。そうでなければ、一生妹のお世話になる可能性すらある。この不況では、好条件で雇ってくれる会社など皆無だ。それに、私達姉妹を育ててくれた叔父にも申し訳ない。
中学生の時、夫婦水入らずの旅行中、事故にあい両親が他界した。残された姉妹二人を無条件に受け入れ、自分の子供と同じように愛してくれた叔父夫婦。両親の葬儀で、泣きじゃくる妹と必死に涙を堪えていた私に、叔父は言ってくれた。
『――もう心配はいらない。穂花ちゃん、泣いていいんだ』と。
叔父の言葉にどんなに救われたことか。そして、その言葉通り、独り立ちするまで、なに不自由無く育ててくれた。
これ以上、優しい叔父に甘える訳にはいかない。自分でどうにかするしかない。
ポンっという音を鳴らし、目の前の扉が開く。長い廊下の先を見つめ、一歩を踏み出した。