社長の推しは、地味メガネのわたしでした。
「清瀬さんも、花音のファンなんですね?」
ウンともスンとも言わない私を尻目に、笑み崩れ『花音』への愛を語り出す社長。その愛の言葉が、右から左へと耳を流れていく。
「ところで、清瀬さん。そのキーホルダーどこで手に入れたんですか?」
「えっ?」
突然かけられた言葉に、死にかけた意識が戻り、社長へと顔を向け固まった。
こちらを眼光鋭く見据える社長は、満面の笑みを浮かべ『花音』への愛を語っていた男と、同一人物だとは到底思えない。豹変とも呼べるほどの変わりように背筋がゾワッと怖気立つ。
「だから、このキーホルダー、どこで手に入れたか聞いているんです。貴方を呼び出したのは、それを聞き出すためです」
「えっと……」
彼の手に持たれ、プラプラと揺れるキーホルダーを見て、思案する。
あれだけ深く『花音』への愛を語っていた男だ。下手に嘘をついたところで、バレるだろう。確か、あのデザインは、今回のライブツアーで作られた物だ。ただ、運が悪いことに、あのデザインは非売品で、スタッフ関係者に配られたモノだ。つまりは、ただのファンでは、アレは手に入らない。
妹が、『鏡レンナ扮するVチューバーの花音』だとバレる訳にはいかない。一か八かか――
「それですか……。まさか知らない?」
「何がだ?」
「アレだけ花音への愛を語っていた癖に大した事ないんですね」
「何だと!?」
「だって、それ。今回の鏡レンナのライブツアーを観たファンの中で、抽選でしか当たらない代物ですもの。しかも、抽選結果は、秘密裏に知らされる。ライブの入り口で配られた無料の販促品の中に紛れてました。まさか、社長! ライブでもらう販促品捨てちゃったとか?」
「いやぁ、そのぉ……。実は、ライブに行った事が無いんだ」
「はっ? ライブに行ったことがない?」
「あぁ、ない。あまり、三次元の鏡レンナに興味が湧かなかったというか」
「嘘でしょ。鏡レンナに興味がない……」
その言葉が、心に染みていく。社長は、鏡レンナではなく、Vチューバー『花音』のファンだと言っているのだ。『アイドル鏡レンナ』である妹ではなく、『Vチューバー花音』である私のファン。
Vチューバー花音を嫌い、全ての活動を私に押しつけた妹に、この時ばかりは心から感謝した。
私のファンが目の前にいる。その事実がこれほど嬉しい事だなんて知らなかった。
「俺にとっては、花音だけが特別だからな……」
えっ? 花音だけが特別?
そんな疑問も、次に発せられた言葉に霧散する。
「それで、お願いなんだが……。清瀬さん、『花音』を応援する同じファンとして、頼みたい! 俺の『推し活』に協力してくれ!」
ガバッと、私に向かい頭を下げる社長の態度に面食らう。
「はっ? ――推し活!?」
ウンともスンとも言わない私を尻目に、笑み崩れ『花音』への愛を語り出す社長。その愛の言葉が、右から左へと耳を流れていく。
「ところで、清瀬さん。そのキーホルダーどこで手に入れたんですか?」
「えっ?」
突然かけられた言葉に、死にかけた意識が戻り、社長へと顔を向け固まった。
こちらを眼光鋭く見据える社長は、満面の笑みを浮かべ『花音』への愛を語っていた男と、同一人物だとは到底思えない。豹変とも呼べるほどの変わりように背筋がゾワッと怖気立つ。
「だから、このキーホルダー、どこで手に入れたか聞いているんです。貴方を呼び出したのは、それを聞き出すためです」
「えっと……」
彼の手に持たれ、プラプラと揺れるキーホルダーを見て、思案する。
あれだけ深く『花音』への愛を語っていた男だ。下手に嘘をついたところで、バレるだろう。確か、あのデザインは、今回のライブツアーで作られた物だ。ただ、運が悪いことに、あのデザインは非売品で、スタッフ関係者に配られたモノだ。つまりは、ただのファンでは、アレは手に入らない。
妹が、『鏡レンナ扮するVチューバーの花音』だとバレる訳にはいかない。一か八かか――
「それですか……。まさか知らない?」
「何がだ?」
「アレだけ花音への愛を語っていた癖に大した事ないんですね」
「何だと!?」
「だって、それ。今回の鏡レンナのライブツアーを観たファンの中で、抽選でしか当たらない代物ですもの。しかも、抽選結果は、秘密裏に知らされる。ライブの入り口で配られた無料の販促品の中に紛れてました。まさか、社長! ライブでもらう販促品捨てちゃったとか?」
「いやぁ、そのぉ……。実は、ライブに行った事が無いんだ」
「はっ? ライブに行ったことがない?」
「あぁ、ない。あまり、三次元の鏡レンナに興味が湧かなかったというか」
「嘘でしょ。鏡レンナに興味がない……」
その言葉が、心に染みていく。社長は、鏡レンナではなく、Vチューバー『花音』のファンだと言っているのだ。『アイドル鏡レンナ』である妹ではなく、『Vチューバー花音』である私のファン。
Vチューバー花音を嫌い、全ての活動を私に押しつけた妹に、この時ばかりは心から感謝した。
私のファンが目の前にいる。その事実がこれほど嬉しい事だなんて知らなかった。
「俺にとっては、花音だけが特別だからな……」
えっ? 花音だけが特別?
そんな疑問も、次に発せられた言葉に霧散する。
「それで、お願いなんだが……。清瀬さん、『花音』を応援する同じファンとして、頼みたい! 俺の『推し活』に協力してくれ!」
ガバッと、私に向かい頭を下げる社長の態度に面食らう。
「はっ? ――推し活!?」