社長の推しは、地味メガネのわたしでした。
「いいですか、社長。ファンの中には小学生や中学生など、若い学生もいるのです。貴方のように、湯水の如くお金を使えるファンばかりではありません。少ないお小遣いを貯めて、やっと一個、推しのグッズを買えるという子もいるのです。そういうファンからしたら、社長の発言は、傲慢でしかない」

「……」

「どうして、推し活という言葉が、こんなにも巷に浸透したかわかりますか?」

「いいや……」

「誰でも簡単に、推しを応援出来るからです。お金がなくたって、時間がなくたって、自分なりの方法で、推しを応援する。それこそが、推し活の真髄です」

 シーンと静まり返った室内に、背を冷や汗が流れる。

 あぁぁ、なんてことを言ってしまったのだ。目の前に座るは、仮にも勤務する会社の社長なのに。

 調子に乗って説教してしまうなんて……。

「えぇ……っと。では、社長失礼い……」

「確かに、清瀬さんの言う通りだな」

「えっ?」

「お金で何でも解決しようとしていた俺は、傲慢な奴でしかないな。花音のファン失格だ」

「いやぁぁ、社長と一般人とでは、思考回路が違うと言いますか……、住む世界が違うと言いますか……」

 そもそも、常識が通じない……

「よっぽど清瀬さんが言ったファン像の方が、花音のファンにふさわしいな」

「いやぁぁ……あのぉ……」

 頭を抱え、項垂れてしまった社長を見つめ、この状況を打破する方法が見つからず焦る。

「あの、社長。花音は、自分のファンであれば、どんなファンでも愛していると思いますよ。どんな推し活でも、自分のために無償の愛を捧げてくれるファンに優劣はない。きっと花音もそう思っているんじゃないかな。社長も、自分なりの推し活をすれば良いだけの話じゃないですか」

「自分なりの推し活か……。清瀬さん、君は不思議な人だね。なんだか、花音と話しているような錯覚を覚えるよ」

「えっ……」
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