社長の推しは、地味メガネのわたしでした。
「――落ち着いた? カフェオレでよかったかな?」
颯真さんに渡された缶の温もりが手へと伝わりホッと息をつく。彼の胸で泣きじゃくる私を連れ、近くに停めてあった車に乗せると、わざわざ飲み物まで買いに走ってくれたのだ。
感情の昂りが落ち着いて来れば、冷静さも戻ってくる。
だいぶ彼に迷惑をかけてしまった。
手に持った缶のプルトップをあけ、コクリと一口カフェオレを飲めば芯まで冷え切った身体がほんのり温かくなった。
「颯真さん……、ありがとうございました」
「いや、それはいいよ。それよりも、あんなところに一人でいたら危なかったよ。何があったかは何となくわかるからこれ以上は言わないけど……、とにかく無鉄砲にもほどがある」
硬い口調で紡がれる言葉に、ムッとする。確かに、冬に上着もなく野宿するなど自殺行為だったかもしれない。ただ、今の精神状態で美春のいる家に帰るなんて出来なかった。
「颯真さんには関係ないでしょ」
「関係ないだって!? 昨日の配信だって……、あぁ! よくそんなこと言えるな! どれだけ心配したと思っているんだ」
「心配した? そんなこと、あるわけ――」
気づいてしまった。
なぜ、颯真さんはここにいる? 怪我をした美春ではなく、私のそばに……
「……なんで、いるのよ」
「なんでかって、そんな薄着でマンション飛び出して行ったら追いかけるに決まっているだろ」
「違うの、そうじゃない。なんで颯真さんがここにいるのかって話。だって、美春とデートだったんでしょ」
「美春さん? 彼女なら、律季君に預けたけど」
「そうじゃないの。そうじゃない……、だって颯真さんが私を追いかけて来る理由がない」
そう、彼が私を追いかけて来る理由なんてどこにもないのだ。
彼は美春が怪我をした事も知っている。もしかしたら、二人がデート中に襲われたのかもしれない。
本当だったら、美春の側にいたいだろう。
やっと一ファンの立場から、特別な存在へとなれたのだ。いくら颯真さんが極度のお人好しだとしても、怪我をしている本命を残し、その姉を追いかける理由はない。
じゃあ、なんで彼はここにいるの?
胸の中で突如膨らんだ期待が身体を震わす。
颯真さんに渡された缶の温もりが手へと伝わりホッと息をつく。彼の胸で泣きじゃくる私を連れ、近くに停めてあった車に乗せると、わざわざ飲み物まで買いに走ってくれたのだ。
感情の昂りが落ち着いて来れば、冷静さも戻ってくる。
だいぶ彼に迷惑をかけてしまった。
手に持った缶のプルトップをあけ、コクリと一口カフェオレを飲めば芯まで冷え切った身体がほんのり温かくなった。
「颯真さん……、ありがとうございました」
「いや、それはいいよ。それよりも、あんなところに一人でいたら危なかったよ。何があったかは何となくわかるからこれ以上は言わないけど……、とにかく無鉄砲にもほどがある」
硬い口調で紡がれる言葉に、ムッとする。確かに、冬に上着もなく野宿するなど自殺行為だったかもしれない。ただ、今の精神状態で美春のいる家に帰るなんて出来なかった。
「颯真さんには関係ないでしょ」
「関係ないだって!? 昨日の配信だって……、あぁ! よくそんなこと言えるな! どれだけ心配したと思っているんだ」
「心配した? そんなこと、あるわけ――」
気づいてしまった。
なぜ、颯真さんはここにいる? 怪我をした美春ではなく、私のそばに……
「……なんで、いるのよ」
「なんでかって、そんな薄着でマンション飛び出して行ったら追いかけるに決まっているだろ」
「違うの、そうじゃない。なんで颯真さんがここにいるのかって話。だって、美春とデートだったんでしょ」
「美春さん? 彼女なら、律季君に預けたけど」
「そうじゃないの。そうじゃない……、だって颯真さんが私を追いかけて来る理由がない」
そう、彼が私を追いかけて来る理由なんてどこにもないのだ。
彼は美春が怪我をした事も知っている。もしかしたら、二人がデート中に襲われたのかもしれない。
本当だったら、美春の側にいたいだろう。
やっと一ファンの立場から、特別な存在へとなれたのだ。いくら颯真さんが極度のお人好しだとしても、怪我をしている本命を残し、その姉を追いかける理由はない。
じゃあ、なんで彼はここにいるの?
胸の中で突如膨らんだ期待が身体を震わす。