社長の推しは、地味メガネのわたしでした。
「――そ、そんなことわからないじゃない! その犯人の男が、そう言ったの!」

「いいえ、この事件のもう一人の当事者だった颯真さんに聞いたの。彼も美春も、警察の人に事情を聞かれたのでしょ? そうよね、律季」

「あぁ、そうだ」

「なっ!? 律季、裏切る気なの!」

「もう、無理だろ。それくらい理解しろよ」

 律季の返答にガバッと彼の方へと首を向けた美春の顔が真っ赤に染まり鬼の形相へと変化する。

 美春は、始めから律季を味方につけ、今回の襲撃事件を花音引退のせいにするつもりだったのだろう。しかし、もう一人の当事者、颯真さんから事の真相が私に知らされたと知った今、嘘をつき続けることは不可能だとわかったはずだ。だからこそ、律季は美春に見切りをつけた。

「うるさい、うるさい、うるさい!!!!」

 半狂乱で叫び出した美春を見ても、私の心は冷静さを失わない。以前の私であれば、すぐに彼女の思い通りに行動していただろう。

 たとえ自分に非が無くても、美春の気持ちを優先し、謝っていた。

 その結果が、今の美春と私との関係を生んだ。

 すべて美春が悪い訳ではない。

 自分の気持ちを押し殺し、彼女の望む『穂花』を演じ続けてきた私にも非はある。

 だからこそ、終止符を打たなければならない。

 今の関係は、誰にとっても不幸でしかないから。

 もう肉親を失いたくないという強迫観念を抱えた美春にとっても……
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