社長の推しは、地味メガネのわたしでした。
 三年前と同じ光景に、胸が切なく痛み、うつむく。

 あの時の私では、颯真さんの手を取ることはできなかった。でも、今は違う――

 決意を胸に顔をあげ前を見つめた瞬間、バージンロードの先、祭壇を前に立つあの日と同じ真っ白なタキシード姿の彼が振り向き、こちらへと手を差し伸べた。

「――――穂花!!」

 優しい笑みを浮かべ、私の名を呼ぶ颯真さんの声に弾かれ、駆け出す。

 今度こそ、あの手を――――

 走り出した勢いのまま、両手を広げた颯真さんの胸へと飛び込めば、懐かしい彼の香りに包まれ、涙が込み上げる。

 もう、我慢しなくていい。この、想いを我慢しなくてもいいんだ。

 あふれ出した想いのまま、ギュッと彼に抱きつけば『わかっている』とでも言うように、背に回された手が優しく頭をなでる。その行為があまりにも優しくて、涙があふれて止まらない。

「穂花……、よくがんばったね。三年越しの『miracle』、もう一度ステージで輝く『カノン』を観て胸が熱くなった。やっぱり、あきらめられない。君を困らせてしまうってわかっている。でも、君への想いは――――」

 彼の紡ぐ言葉を塞ぐように、自らの意思で彼の唇を塞ぐ。ビクッと一瞬震えた彼の腕は、次の瞬間には私の体を強く、強く抱く。

 重なった唇が会えなかった年月を埋めるかのように深く、深く交わる。

「――――颯真さん、ダメです。その続きは私に言わせて。最後の約束、覚えていますか?」

「約束?」

「はい。すべてが終わった時、私の想いを颯真さんに伝えるって。だから、待っていてって」

 彼の顔を見つめ、三年越しの想いを伝える。

「颯真さん、愛してます。どうか、この想い受けっとってください!」

 湖面を彩る青薔薇の絨毯の上、ろうそくの光に照らされ、重なり合った二つの影がひとつに交わる。

 重なり合う男女。

 『彼女』の薬指には、大粒のダイヤと、それを囲むように配置されたブルーサファイヤの指輪が、幻想的な光に照らされキラキラと輝いていた。
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