Dearest 2nd 〜Moon〜
─────…ドサッ!
無言を貫き通したまま、マリアは机の上に座った。
その態度といったら超ド級の不服モード全開で。
「……………」
その目は威圧的で、いかにも彩を調べるようにジッと見つめていた。
「────…彩、こいつは皐月 マリア。
人見知りやし、この通り無口な奴やねんやけど許したって。」
ごめんな、と目で合図するとおずおずと頷き返す彩に微笑み返す。
「────これがさ、
俺のバンド仲間。」
そう言うと、吾郎と壱は顔を見合わせ“想像通り”と言う意味合いを込めながら彩に微笑んだ。
……残念ながら、マリアだけは視線を合わさなかったが。
「───…あっ!!♪
ちなみにね、オレがギター担当なのっ!」
壱はパタパタと奥に走って行き───…
「───ほら見てっっ!♪
オレの彼女っっ!!!!!」
壱の愛する彼女、つまり“ギター”を彩に紹介し始める。
「……わぁっ、ギターだ……!!これがいっちゃんの彼女?」
「うんっ!!♪
オレの宝物なんだぁっ♪」
「───本当にスゴいね!
ねぇ他にどんなパートがあるの?」
彩は興味が湧いたのか、忙しそうに辺りを見回し始めた。
吾郎はそんな彩の様子を見て微笑み、
「───…俺がベース。
マリアはドラムだよ。」
「……へぇっ……!」
「───…でねでねっ!
純はご存知ボーカリスト!
んでもって、我らがリーダーなのっ!
超~~~鬼で有名なんだけど、純がいるからオレらが成り立つんだよっ!♪」
「……………壱?
お前“鬼”は余計な一言やぞ?」
俺の紹介をしてくれたのは有り難いが、何となーく毒吐かれてるようで壱を睨む俺。
その睨みにハッと気付き、ヤバイという顔をする壱を追いかけるカウントダウンが始まった。
「……えっ、……キャー!!
ごめんなさいごめんなさい~っ!!!!許して純!
今のはほんの可愛いジョークのつもりだったんだよ!」
「嘘つけ思いっきり本気やったやろうがこの猿!!」
「キャー!!!!やっぱり鬼~っっ!!!魔王~~っっ!!!化け物~っっ!!」
「お前今どさくさに紛れて何て言うた!?!?待てコラ!!!!!!」
─────バタバタ!
「きゃあぁぁぁ!やっぱり鬼だぁ〜!!」
「うっさい待て猿が!!」
この期に及んでまだ反抗しながら逃げ回る壱を追いかけ回していると──…
「……ふふっ……」
彩が笑っているのが横目で見えた。
「……壱はね、いつもあぁやって純かマリアにいじられてるんだよ。」
「……素敵ですね……。
───…あ……
そういえば、バンドの名前は何なんですか?」
「─────…紅。」
そういち早く返事を返したのは、意外にもマリアだった。
「────“紅”って書いて、“くれない”って読むの。
───不死鳥や鳳凰のように、永遠に光り放つ存在であり続けるって意味。」
「………マリアさん……」
実はマリアがこのバンド名の名付け親。
意味も何もかも、結成当時にマリアが全部決めたもの。
そこだけは譲れなかったのか、しっかりと自分でバンド名を言うマリアに、俺は驚きながらも何だか嬉しくて。
「──“紅”………。
とっても素敵なバンド名ですね…!」
彩が嬉しそうにそう言っても、再びマリアはそっぽを向いてしまったが。
彩がバンド名を素敵だと言ってくれたのは、きっとマリアも嬉しかったことだろう。