Dearest 2nd 〜Moon〜
「……さーて、俺そろそろバイト行ってくるわな♪」
──────ポンッ。
マリアの頭をもう一度撫で、俺は腕時計の針を見た。
「……大晦日なのに頑張るね。」
「まーね♪
今日で一応仕事納めやし頑張ってくるさ♪」
無駄に力こぶを作り、さっきまでの暗い雰囲気を吹き飛ばすように明るく笑いながら玄関に向かう。
「あとで吾郎も壱も来るんやろ?」
「うん、吾郎と壱の家で鍋パーティやるんだって言ってたよ。」
「やった♪俺キムチ鍋がいいってリクエストしといて♪
あとビール大量ヨロシク★」
「オッケー。」
大晦日は決まっていつものメンバーで迎える事が多い。
ほぼほぼ全員が家庭環境が複雑なうえ、それぞれ実家には戻ろうとはしない。
そういう事もあってか、俺達はもう家族同然の関係だった。
──────カタッ…
靴を履き、マリアの家の玄関の扉を開けようとすると
「───ねぇ、純」
「ん?」
「……今年の終わりにさ、きっと良いことあるよ。」
「へ、え?」
“良いことあるといいね”、じゃなくて“良いことあるよ”?
だ、断定?
頷こうとして途中で疑問系に変わった俺の返事を聞いて、マリアは意味深にくすくすと笑った。
「……あの、マリアさん。
今年ってあと数時間ですけど……」
「───うん、だからね。
その数時間のうちにきっと良いことあるよ。」
「……」
う~ん、会話のキャッチボール不可能。
イマイチ意味がワカラナイ……。
「良いことって……
あ、年末ジャンボ当たるとかかなー♪」
「違う」
「んじゃーバイト代が二倍に跳ね上がる♪」
「違うね。」
「……何やねん……」
──────キィ…
マリアのよく分からない謎解きを特に気にせず、扉を開ける。
するとマリアは何か企んでいるような、ドSな笑顔でニヤリと微笑み
「─────きっとね。
このあと純が思わず笑顔になっちゃうような、そんな素敵な出来事が起きるハズだよ」
“だからクソ忙しい大晦日のバイト頑張れ”、と。
ぶっきらぼうなマリアの真意が分かるのは、その数時間後の事だった。