Dearest 2nd 〜Moon〜
────…ブォン…
車に乗り込み、エンジンを掛けて直ぐ様発車。
幸いにも道は空いていて、思ったより早く着きそうで一安心。
……まぁ早朝だからな。
途中コンビニに寄れる余裕もあり、食べられなかった朝飯も購入。
窓から澄んだ空気を吸って、サンドイッチを片手に運転ってのも悪くない。
……で。
いつもならこれにプラスコーヒー、と言いたいところだけど
「───甘っ!」
今日はミルクティー。
理由は単純明快。
コーヒーが陳列されていたすぐ横にミルクティーが並んでいたから。
───…彩が一番好きな飲み物。
今までなら絶対に選ばない物も簡単に影響されてしまうなんて、俺は単純?
ましてや紅茶なんて飲まなかった俺が、と自分でも驚くよ。
でもこれを買う度に君の顔を思い出す。
……それって、ささやかな幸せだ。
────♪…♪~…
車内には好きなアーティストの曲が流れている。
気分も良いし、一緒に口ずさみたいけれど
「─────…」
未だ、気楽には歌えない自分がいた。
歌おうとすれば、喉に声が貼り付いて声が出ない。
一年前のあの日。
俺は体力も精神も底まで落ちていて、何も歌えずにステージから崩れ落ちた。
その日を境に、一回も大きなステージに上がる事はなく───…
また過呼吸を起こすんじゃないか。
また倒れてしまうんじゃないか。
あの恐怖がトラウマとなって、とてもじゃないけど人前では歌えない。
こんな風に、一人でも気楽に歌えなくなっている俺が復帰なんて絶望に等しい。
「…───もう……
二度とあんな大きくて煌やかなステージに立つことはないんやろうな……」
頭では分かっているけれど、寂しい。
─────…プチッ…
俺は音楽を止め、ちょうど辿り着いた空港に降り立った。