Dearest 2nd 〜Moon〜
「じゃあそんな状態だったら……
今回のライブ辞めておいた方がいいんじゃないの…?」
俺は香宮さんの言葉に、首を振った。
「俺……多分このままやとずっと周りに甘えるから…」
───吾郎も壱もマリアも、多分。
俺がこのまま逃げ続けて、その果てに“歌を辞める”という選択をしても何も言わないだろう。
あるいは、中途半端にこのままの状態であっても、あいつらの事だからきっとずっと待ってると思う。
どんな答えを選んだとしても、何があっても見守ってくれると思う。
────でも……
俺が“続ける"か、"辞める"かのどちらかの道に一歩進まない限り、アイツらはずっとあのままだ。
“純”
……何も言わずに見守ってくれている人がいる。
それはとても有り難い事だけど、俺はきっとあいつらの優しさにいつまでも甘えてしまう。
それがいつしか慣れになり、もうきっと何もしなくなる。
────本当は分かっていた。
進まなきゃいけない時は、他人に引っ張られて進むんじゃない。
俺自身が、前に進む事を納得して踏み出さなければいけないってこと。
分かっていたけど、いつまでも甘えていた。
「朝岡くん声、大丈夫なの?
また無理して倒れたら……」
「あー…今回はね、リハビリって事で一応出演するだけやねん。ボーカルはマリアの予定やし。」
「へぇ…!!今回ボーカル皐月さんなの?」
「うん」
「初期の紅って、皐月さんがボーカルだって聞いたことある。」
「え!!そこまで知ってんの!?香宮さん結構なファンやな!!」
香宮さんは少し自慢げに笑い、ドヤ顔だ。
「あたし、これでも筋金入りのファンなのよ。
これで分かったでしょう?」
「……恐れ入ります…」
くすくすと笑う香宮さんに、心から感謝の気持ちが溢れた。
「…ありがとう…」
「何言ってるの、あたしはずっと何があってもファンよ。これからも追い掛けるのに変わりはないし、絶対離れないわ。」
────不覚にも泣きそうになった。
ここまで応援してくれる人がいるんだ。
何を迷っていたんだろう。
俺が出来る事は何だろう。
あの時香宮さんに背中を押された事。
待たせている人……
それは言い換えれば見守ってくれている人。
進む時は自分の足で進まなきゃいけない事。
────気付いた瞬間
俺の閉まった扉が開き、目の前に新しい世界が広がった気がした。