Dearest 2nd 〜Moon〜
「あのさ、彩……。もう1つ、ついでにやねんけど。」
「え?何?何?」
大事そうにチケットを握り締めてくれている彩に、もう1つワガママを言ってみる。
「学祭当日さ……。
俺、車で迎えに行くから良かったら一緒に行かん?」
言い終わった後に、さすがにこれは言い過ぎだったか?と思ったけど。
「い、いいの……?」
「……当たり前やん。
ってか、俺が一緒に行きたいの。」
「えへ……」
君が、そんなに嬉しそうに笑うから。
ワガママも、たまには言ってみるもんだと思った。
楽しみで楽しみで。
毎日が駆け巡る様に過ぎていく。
──────……そんな数日経ったある日……。
「ッぎゃぁァァァ!!ゴローちゃん!!純が!
純が鬼に戻ったぁァァァー!痛ーーーぁぁぁい!」
「うっさい犬!何が練習したやねん嘘付くな!!」
「したもんしたもんーーー!誰か助けてぇぇぇ!」
彩に学祭の約束を取り付けてからと言うもの、俺は再び息を吹き返したように練習に励んでいた。
「……ありゃー。
純、お前ホントに絶不調から絶好調になっちまったんだなぁ〜」
「そぉだよ!!何が歌えないだよ!
もう全然元の鬼に戻ってるじゃんかぁぁぁーーー!
あの頃の純に戻ってぇぇーーー!!」
「────はぁ?」
キャンキャン泣き言を言いながら吾郎に抱きついている壱を睨み付けると、危険を即座に感じ取ったのか途端に静かになった。
「……ったく。
どんだけ上手くなってるかと思ったら全然下手クソのままじゃない。」
「何だよマリアぁぁぁ!!」
「……あら、間違えた。
“ド下手♡”の間違いねー。」
「うぁぁぁぁん!!」
そこにマリアが俺の援護射撃に回り、壱はますます声を上げ吾郎に抱きつく。
……いつもの、でもちょっと懐かしい、よくある風景。
もう戻れないとさえ思っていた、日常。
俺はくすくすと笑い、窓を開けて新鮮な風を感じた。
「……ねーねー。
純をここまでにしちゃうなんてアヤヤって一体何者なの〜?」
「んー?」
「あんなに弱ってた純が、アヤヤがライブ来るってだけで、また鬼化させちゃうアヤヤの存在が恐ろしくてたまんないんだけど!」
風に吹かれたまま、俺は笑う。
「────すごい子、やよ。」
「えぇー色んな意味でこーわーい〜!」
「せやろー?
お前なんかすーぐコテンパンにやられるぞ。」
「えぇっ!やだやだぁ!」
……本当にすごい子なんだよ。
俺を、無条件でここまで立ち上がらせてくれる子なんだから。